今、時代が求める国際人財と将来へのビジョン

国、企業活動、社会・生活環境のグローバル化、ボーダレス化が急激に加速している今の時代にあって、将来国際人財として活躍し成功するためにどのようなスキルや能力が求められるのか、今から意識して取り組むべきことは何なのか、等について、講演者・パネリストのみなさまの経験談を交えながらお話頂きました。

◆基調講演
越 純一郎 氏(株式会社 せおん 代表取締役社長)

◆パネルディスカッション
パネリスト:
越 純一郎 氏(株式会社 せおん 代表取締役社長)
佐藤 信雄 氏(ハーバード・ビジネススクール 日本リサーチ・センター長)
久保 啓行 氏(コロンビア・ビジネス・スクール卒業生 Class of 2009)

1部 基調講演


【講演者プロフィール】
越 純一郎 氏
・ 1978年、東京大学法学部卒業、日本興業銀行(現みずほコーポレート銀行)入行。ニューヨークと東京で約20年にわたりM&A、証券化、不動産関係などのインベストメント・バンキングに従事し、数々の実績を残す。
・2000年3月、ニューヨーク駐在中に、日本に対してプライベート・エクイティ(PE)を紹介する先覚的著作を刊行。同年、PE実践の一環として企業経営者に転身し、企業再生の現場経営者としても実績を挙げる。
・併行して、各種企業、投資ファンド、外資系金融機関などの顧問を歴任。社長塾を主宰。講演、著作多数。
【主な役員研修・幹部研修実施先】最高検・東京高検、JR東日本、新日鉄エンジニアリング、大手商社、公務員研修所
【主な現職】せおん代表取締役、各種企業の取締役・顧問、東洋大学大学院客員教授
【主な公職】事業再生実務家協会常務理事、法務省外国弁護士制度研究会委員(~2009)
【主な著作】「事業再生要諦」(2003年)、『プライベート・エクイティ 勝者の条件』(2010年)。
【主な社会貢献活動】経営者・実務家の育成、NPO支援(「かものはしプロジェクト」ほか)、養護施設支援(社会福祉法人希望の家)、献血


越 純一郎氏は、事業再生の実務家として著名。本人は否定も肯定もしないが、同氏はNHKドラマにもなった経済小説「ハゲタカ」のモデルの一人と言われる。プライベート・エクイティ投資の世界でも著名で、その関係の執筆・講演も多数。

越氏は、日本興業銀行(現みずほコーポレート銀行)に入行後、2度にわたる計12年間のNY勤務したうえ、2000年から企業再生の現場経営者となって約3年で完了させ、再生の時代の嚆矢となった実務家です。しかも、再生実務と同時期にVCの顧問、アセアンの国営銀行の顧問、民事再生企業に顧問などを歴任するだけでなく、JR東の役員研修、最高検察庁の幹部研修、法務省委員会の委員など、多岐にわたって実績を上げてこられています。

また、ビジネス・スクールで教鞭をとるほか、現役の経営者に対する経営塾や研修等にも注力されているなど、未来を担う若手の経営者・実務家の育成にも熱き情熱を注いでらっしゃる越氏から、「国際人財」の考えについて、7つのステップでご説明いただきました。

有利な人生を築くにはどうすればいいか
「マインドセットとスキルセットを磨く=人格と能力の両方を磨く」というメッセージが大変印象的でした。
外資系企業のヘッドハンティングにおける書類には、マインドセットの中に「integrity」という単語がよく書かれているそうです。「integrity」とは、「高潔な人格」という意味です。外資系企業でも人格の高潔さが重視されており、「能力さえあればいい。英語ができればいい。」などという考えは大きな勘違いのようです。

また越氏は、人格者になるには、「1日5分でもいいから自分を振り返ることが重要」とアドバイスしてくださいました。「ああ、今日はここで失敗した」「この次に同じことがあったら、こうしよう」などと、自分を振り返ることが大変有効だとおっしゃっていました。

組織に入ってしまうと、どうしても上記1.のとおりの、大変不安定なリスクにさらされてしまう。2.も大して変わらない。
「終身雇用制は永遠に変化しないだろう」などといういい加減な自分の考えによって、「一度だけの大切な人生を粗末に生きてしまってよいのか?」と熱く問いかけられました。そして、有利な人生選択の具体例として、とにかく、「①英語」、「②PC(インターネット)」、「③専門性」!を挙げられました。

「この3つの習得に努めることが、今後の最も有利で真に安定した人生戦略であり、高いリターンと人生の成功への最短コースである。」「そして何の専門性もなくて、英語、PCも得意じゃないという人材が、組織の中で一番必要とされないという傾向も、5年たてば今よりも強まる。10年たてばさらに強まる。」とお話されました。


そして、ここからは3つの内の1つ「英語」への道について、3ステップでお話しいただきました。

越氏は次のように語りました。

『・「とにかく、外に出ること」が大事! 国内にいるよりも、実際に進学、駐在するほうがはるかに良い。
・決心さえあれば、留学の方法は必ず見つかります。実現できるかできないかの運命の分かれ道は、「あきらめないかどうか」です。能力があるかないかは、分かれ道にはなりません。お金があるかないかも。特に欧米には、資金が全額出るような奨学金制度が多数あり、分かれ道にはなりません。

・また、一方で英語への「真の壁は大変厚い」です。留学した日本人が「私は英語も日本語もできるからダブルです」というが、実際には、英語はアメリカ人の10%もできず、日本語だってろくに書けず、敬語や漢字も不正確、古典も漢籍しらないなど、実にお粗末。彼らは、自分では「ダブル」のつもりだが、実際には日英どちらも中途半端な「ハーフ」にすぎない。
・20歳以降から海外に住んでも、それも何十年も住んでも、所詮は交渉の現場で、相手の言うことの半分くらいしか理解できていない。
・英語力のスキルアップとしては、ディクテーション等で、何よりも耳(リスニング能力)を鍛えることが重要。

・それでも、現在は、ほとんどの日本人が「ハーフ以下」なので、「ハーフ」程度の低レベルの英語力でも、無いよりはずっとまし。
・だから、今後、志を持って海外に挑戦する人にとっては、ますます有利な世の中になってくる。競争者が少ないから(留学者も駐在員も帰国子女も減少している)

国際人の根本は「①人間力」と「②日本力」。まず何よりも、人間としてのレベルの高さ、日本人としてのレベルの高さです。まず立派な人間となり、日本の歴史や文化をよく勉強すること。英語だけじゃダメ。』


そして、最後に、海外に出ようとする皆様に、百戦練磨のビジネスマンである越氏らしいメッセージをいただきました。

『「逆張りの発想」 -不利・有利は、需給関係をよく考えて決めてほしい。 要するに、皆がやっていることは競争者が多く不利。 皆が見向きもしない分野なら、競争者が少なく有利。 アセアンならタイ、ヨーロッパならスウェーデンなどが「穴場」です。 両国も、今後の日本にとって非常に重要になるのに、「タイの専門家」「スウェーデンの専門家」は、ほとんどいません。』

2部 パネルディスカッション


【パネリストプロフィール】
越 純一郎 氏

佐藤 信雄 氏
ハーバード・ビジネス・スクール 日本リサーチ・センター長
1978 年慶應義塾大学経済学部卒業。日本興業銀行(現みずほコーポレート銀行)に入行後、ハーバード・ビジネス・スクールに留学し1982年にMBAを取得。ロンドン勤務を含めて主に資本市場関連の業務に従事。その後、世界5大エグゼクティブ・サーチ・ファームであるEgon Zehnder Internationalに15年勤務し、その間10年間パートナーとしてPEファームを含む金融機関を主なクライアントとしてコンサルティング業務に従事。 2009年8月より現職。

久保 啓行 氏
1999年、東京大学教養学部卒業。富士通株式会社に入社後、コロンビア・ビジネス・スクールに留学し2009年にMBAを取得。アジア政府間での電子商取引基盤に関する実証実験に従事。その後、富士通が買収した欧州企業の事業管理、そして現在は主として海外事業におけるコンプライアンス体制整備やCSR関連業務を担当。



Q1
みなさん海外で学ばれたご経験を持っていらっしゃいますが、海外に飛び出すことで、どんな力が鍛えられると思われますか?また、どんなご自身の人生に役立つ経験をされましたか?

久保:根性・度胸ついた(笑)!
だまっていても自分のバックグラウンドは理解してもらえない。自分の持っている力を「説明してなんぼ」の世界。度胸を持って言ってしまうことが大事。それができたからここに座っています(笑)。

佐藤:根性。厳しい勉強に2年間耐えられたのは自信。そして「会社の経営」というのを見る目が養われなかったら、銀行を辞める判断は出来なかったと思う。
ロンドンではある部門の責任を持ってローカルの人をマネージする仕事をしておりましたが、彼らはやはり日本人の考え方とはかなり違う。多様な考え方は実際に海外で生活しないと分からないことがいっぱいある。もう今の時代、グローバルのことがわからないと、会社の経営とか正しい判断ができなくなってきている。

:12年間もニューヨークに居たので、自然にアメリカに馴染んだ。しかし、日本の銀行にいただけで、アメリカの金融機関に属したのではないので、所詮、限界がある。
日本企業のNY駐在員をしているだけでは、大したことはない。なにしろ、日本企業には、マニュアルすらないのだ。終身雇用制だと口頭伝授でなんとかなるのでマニュアルがない。アメリカの企業は必ずマニュアルがきちんとある。いつ誰が辞めるか分からないのでマニュアルは必須。そういった文化のギャップもよく見えた。


Q2
海外で自分の意見を言わないと理解してもらえないのは重々承知。「だけど、英語が・・・」という英語で困ったエピソードがあればお聞かせください。

久保:今、このセミナー会場にいる(留学を目指す)方たちは、そこそこ自分の能力に自信ある方が多いと思う。
その方たちが、ほとんど自分を分かってもらえない世界にいく。そこでは、プライドも何もない。英語だって、あれだけ勉強したのに、発音すら最初は分からない場合が多い。
でも慣れる。場数を踏めば、なんとかなります。
ビジネス・スクールで感じたのは、英語の差はネイティブとは圧倒的にあること。日本人の中ではできると思っていたけど、留学生にも、もっとできる奴が沢山いて悶々とした。
それでも場数を踏めばなんとかなります。やらなかったら何も始まらない。

佐藤:久保さんの言われるように、場数が重要と思う。
場数プラス、ロジックで戦う。そもそも日本語で論理的に話ができない人が、英語でできるわけがない。まず自分の論理力を鍛えること。
日本人は話すことに遠慮がある。その結果、なかなか授業でも仕事でも発言できていない。
一方で、教授が指さなくてもどんどん話すインド人とかがいる。日本人は「あなたが発言しなければ、他の人があなたから学ぶ機会も失わせているのだ。発言するのは義務だ。」という視点を忘れがち。日本人は優秀だし、思慮深いので、何かしら語ることがある、と特に期待されている。
また、発言するときに、日本人は結論をはっきり言わない。回り道してできるだけ丁寧に言おうとするらせん型思考。海外の人は結論を聞きたいだけ、という場合が多い。とにかく、ロジカルなコミュニケーションを意識することが重要。


Q3
これからのグローバル化の時代に当たって、どんなスキルが求められますか?また今からできることは?

佐藤:ハーバードでは、「attitude とか behavior」という言葉をよく使う。
問題があったときに問題を先送りしない。ケースに登場する主役の立場に立った時の、問題を解決するための行動の手順を考えるディスカッションをケースメソッドでたくさんやる。ハーバードの人間が活躍しているとしたら、attitudeがあることだと思っている。分析力だけでなく、問題を解決したり新しいものをつくっていく力は、これからの日本に非常に重要。日本は先送りする、波風を立てないようにという和を尊ぶ文化はある。しかし、現在の日本の状況は、問題を先送りにする状況ではない。日本の国際化には極めて重要。

:「道は拓ける」と思うべきだ。「日本人の4年生大学卒業生とアメリカ人のビジネス・スクール卒業者とは、能力自体は同じ。」とよく言われた。実際にも、外資系のヘッドハンターは、MBAであるか否かよりは、実務能力と経験の深さ・長さ、そしてインテグリティ(高潔な人格)を求めている。人間としての素晴らしさを鍛えることが大事。
また、繰り返しになるが、日本の歴史やマーケットをしっかり理解すること。アメリカで仕事するならば「英語ができる」ということは当たり前。日本の歴史やマーケットをしっかり理解して、その上で、初めて英語力が活きて行く。

久保:専門性。一言で、「あなたは何ですか?」に答えられるスキル。「自分は○○会社の誰々」ということではなく、「自分が何ができるか」をしっかり答えられることが重要。その専門性と合わせて、新しいことを学ぶ学習能力が必要。専門性を生かしながら新しいことを学ぶ能力が重要と思う。


Q4
海外に出る=異文化に飛び込む、ということで、「ダイバーシティ」違いを認める、ということもスキルではないかと思いますが、そのあたりでご意見ありますか?

佐藤:日本の大企業の強みだった同一性、というものが現在は弱みに転じている。何十年も同じ会社で同じメンバーで過ごすことは、高度成長時代はキャッチアップをこなしていけば良かったから効率的だった。しかし、高度成長が終わり、新しいイノベーションを起こしていく必要がでてきている現在、必要なのはダイバーシティの発想。海外、異文化のやり方、オペレーションを、彼らの文化の中で学ぶのは非常に重要。
例えば、女性の雇用も日本はまだまだ。コンシューマー・マーケットの半分は女性。多様性を受け入れるカルチャーを学ぶことが必須。

:ニューヨークに10年以上いて(日本人を)見ていると、数年程度の在住では、日本人は宗教、異文化、ダイバーシティについて、分かったつもりになってはいるが、実際はほとんど知識なく、ぼんやりした認識で帰ってきてしまっているように思う。
また、某大手鉄鋼企業では、MBAに行きたいと言うと人事部長に「会社の都合考えずに留学したいなんて!」と怒られる(笑)。ばかげた会社があるのだ。女性MBAへのやっかみも同様。日本の国際化は、案外、簡単ではない。

久保:日本企業は同じであること前提、海外に出ると、人は違う考えであることが前提。日本人は海外の人を日本人化させたがるが、それではビジネスがまわらない。海外の人のやり方を受け入れていくことが必要。相手の立場をわかる理解力。それがあって初めてビジネスが一緒にできる。


:ビジネス・スクール留学のメリットは英語できるようにはなることだとするのなら、もしかしたらマッキンゼーに2年勤めた方がいいかもしれない

久保:全く日本(での経歴)と関係ない状況に行けて、そこで揉まれることでしょうか。拠り所となるものを切って、自分を伝えられることを学べたと思っています。

佐藤:ハーバードは下記のような力を育てることをミッションとしていますね。
 1.リーダーをつくること。世の中の違いを作り出すリーダーをつくるのがミッション。
   ・リーダーシップ=自分の力で考え、人の上に立つ人格
   ・組織を動かす力=色々なことを考える。
  この両方必要。
 2.専門家の方々をうまくマネージする力を育てる。ゼネラル・マネージメントの力がまさにハーバードの専門性。
 3.自分の考えと行動計画のプロセスを徹底的に説明できる力を育てる。


Q5
最後に、留学を目指す皆さんへメッセージをお願いします。

久保:今を楽しみましょう! 色々な立場の方がいらっしゃると思いますが、今の準備を楽しむ。それを楽しんでこその留学です。

佐藤:自分のComfortableなゾーンから一歩踏み出してチャレンジする。そのために海外に行くことは大事。今後の日本でも、できるだけ多様な自分の座標軸を持つことが必要。ハーバード日本人MBA数は、ピーク時の半分以下で10人前後。インド人は日本人の5倍に中国人は日本の3倍に増えた。彼らはどんどんグローバル化して育っていっている。これからの日本人にとってグローバルな競争が激化する中で「働く場」はどんどん厳しくなっていく時代。常に、個人のレベルでもチャレンジすることが重要。

:今は、考えようによっては良い時代だ。昔は、ぼんやり生きていても何とかなった。今は自分の人生をしっかり考えていく必要があるし、考えていけるようになったと思う。
また、世間が本当に内向き志向なのであれば、それは「強い競合がいない」という事でもある。だから、志のある者にとっては、有利な時代になったのだ。
最後にもう1つ。私たち3人は、ご覧いただいたとおり、人間としてのエネルギーがあると思う。私自身も80歳過ぎるまで現役のつもりです。元気をもらった、という気分になるのは、先輩が一生懸命やっているのに会った時だと思う。こういったイベントで、若い皆さんを元気づけられるようにするのが、先輩のつとめだと思っています。


以上


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