【コラム】世界の留学生受け入れ事情、果たして日本は?(その3)

皆さん、こんにちは。
アゴス・ジャパンの佐々木です。

前回のコラムでは、日本の大学における留学生の受け入れ状況についてお話しましたが、今回はアメリカの状況について焦点を当ててみたいと思います。

皆さんもご存じの通りと思いますが、アメリカは世界で有数の留学生受け入れ大国としてその名を馳せています。前回の記事で、日本で学ぶ留学生数が208,379人(2015年)(*1)とお伝えしましたが、アメリカでは1,043,839人(2015-2016年)(*2)と、日本と比べると実に5倍に及ぶ留学生を受け入れています。しかも2005-2006年当時の565,039人(*2)からこの10年間でほぼ倍増という伸び率です。

では、アメリカの一体何がこれだけ多くの留学生を惹きつけているのでしょうか。

まずは、アメリカで学ぶ留学生の国別の順位(2015-2016年)を見てみましょう。(*2)
1. 中国
2. インド
3. サウジアラビア
4. 韓国
5. カナダ
となっています。アジアの国々が上位を占めている状況が見て取れますが、総数で言えば、アジアからの留学生は、689,525人(2015-2016年)(*2)となっており、アジア出身者は圧倒的に高い割合を占めている状況になっています。留学生全体の実に66.1%にも及びます。

その要因の一つに、アジア経済が急速に発展していることも、留学生の増加に影響している事実は否めないでしょう。かつてはごく一部のエリート(国費留学生)のみが留学するという状況から一変し、急速な経済発展によって生じた経済水準の上昇とそれに伴う進学志向の上昇、さらに国際社会で生き抜くために高等教育が大衆化したことの影響は少なくありません。

また、アメリカのトップレベルの大学の教育水準の高さも理由の一つに挙げられるでしょう。イギリスの教育専門誌「Times Higher Education」の最新の世界大学ランキング(2016-2017年)(*3)によれば、マサチューセッツ工科大学・スタンフォード大学・ハーバード大学がトップ3を占めるほか、上位20位の中には実に11ものアメリカの大学がランクインしています。
ただ、国全体の教育水準で言えば、実はアメリカはそれほどでもないようです。世界的な総合教育企業である英Pearson社の調査による世界教育水準ランキング(2014年)(*4)で上位を見ると、
1. 韓国
2. 日本
3. シンガポール
4. 香港
5. フィンランド
と、実はアジアの国々が上位を占めている状況となっています。わが日本もなんと2位という好順位ですが、アメリカはなんと14位なのです。アメリカには2年制大学を含め4,000以上の大学があると言われていますが、教育水準の高い大学は多く存在したとしても、全体の平均値で下がってしまっているのが実情です。つまり、アジアの国々では平均的な大学水準は高いものの、アメリカの中の、本当に優秀な大学が留学生たちを惹きつけている見方ができるのではないでしょうか。

さらに、アメリカは国策として留学生の受け入れ体制を強化している背景があります。彼らの基本スタンスは、アメリカで教育を受けた学生たちが帰国後にアメリカと良好な関係を築き上げていくことは長期的視点で見て確実にアメリカの利益につながると見ていることです。また、留学生たちがアメリカで学ぶために使った費用は、実に約2.7兆円(2014年)(*5)にも及び、アメリカ経済にもたらす利益貢献度を重要視しています。

これらの例から見ても、最終的には、行きたい(学びたい)と思える大学がその国にあるかどうかにかかっていると思います。受け入れ留学生を増やしたい日本も、外国人留学生が本当に学びたい、と思える大学づくりをしていかないと、状況が好転することは難しいのかもしれません。

また次回も皆さんのお役に立ちそうな興味深いネタをご紹介できればと思っています。

(*1) 独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の「外国人留学生在籍状況調査結果(平成27年度)」調べ
(*2) Open Doors Data Fast Factsより
http://www.iie.org/Research-and-Publications/Open-Doors/Data/Fast-Facts#.WFf6qFyCTYs
(*3) Times Higher Education World University Rankingsより
https://www.timeshighereducation.com/world-university-rankings/2017/world-ranking#!/page/0/length/25/sort_by/rank/sort_order/asc/cols/stats
(*4) 英Pearson社による Index – Which countries have the best schools?より
http://thelearningcurve.pearson.com/index/index-ranking
(*5)https://thepienews.com/news/international-students-contribute-26-8bn-us-economy/