【コラム】日米の大学教育における起業家教育(アントレプレナーシップ)について(その2)

前回のコラムでは、この不確実性の時代において、「アントレプレナーシップ(起業家精神)」がますます重用され、そのための起業家教育が大いに注目されている、というお話をしました。

今回は、日本の大学における「アントレプレナーシップ教育」への取り組み状況に目を向けてみたいと思います。

立命館大学では1999年に経営学部に企業家養成コースが設置されたことを皮切りに、2005年には、経済、経営、理工、情報理工、の4学部共通の「産学共同アントレプレナー教育プログラム」(*1)として確立。当時は先進的な取り組み事例として文部科学省の現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)にも採択されました (H17~18年度)。昨今では当あたり前のように、「起業家教育」が語られていますが、当時は先進的な取り組みとして注目を集めました。

2009年には、生命学部、薬学部にまで範囲を拡げ、現在の「アントレプレナーシップ教育プログラム」という名称になったとのこと。このような教育が必要と英断した姿勢もさることながら、幅広い分野の学生に必要なものであると対象範囲を拡げた同大学の考え方に本気度が感じられます。

また、早稲田大学も起業家教育に非常に力を入れている大学の一つです。
早稲田大学では「グローバルエデュケーションセンター(GEC)」(*2)という、真に国際的な視野から物を見ることができグローバルな社会に貢献できる人材の育成を目的とした教育機関を2014年に設立しました。
GECではさらに、2017年度より全学に向けたイノベーション・起業家教育プログラムとして、「ビジネス・クリエーションコース」を展開することが発表されています。このコースでは、「起業家養成講座」「イノベーション創出思考法」「ビジネスモデル仮説検証」など、起業家教育に欠かせない実践的なカリキュラムが用意されているのが特徴です。

その中でも特に、試作品を作成し、顧客対象候補の反応見ながらビジネスモデルを策定する「ビジネスモデル仮説検証」は、大変ユニークなカリキュラムではないかと私自身も注目しています。

既に同大学では、文部科学省の「グローバルアントレプレナー育成促進事業(EDGEプログラム)」において実績を上げており、これまでの累計受講者は2,000名以上にものぼるとのことです。本プログラムは、大学の正規の単位ではありませんが科目等履修生として認められますので、他大学学生や社会人にも門戸が開放されている全学オープンコースであることも大きな魅力になっているのではないかと思います。

その他にも事例は他にも数多くあることからも、このような大学教育における起業家教育の需要はますます高まっていくことが容易に予想されます。また、私自身も現在は東北大震災復興プロジェクトの一環で、起業家育成・支援の業務に携わっていますが、このような「起業家教育」の必要性は大学生に対してはもちろんのこと、もっと若年層に対して提供したほうがより高い効果が得られるのではないかと感じることが少なくありません。最近では、小中高生に対しての起業体験ワークショップなども開催し、地方自治体や学校関係者・保護者達からも評価を受け、手応えを感じています。

近い将来、起業家教育は、決して特別なものではなく、当たり前に施される教育カリキュラムの一つになるのではないかという気がしています。

(*1) 産学共同アントレプレナーシップ教育プログラム http://www.ritsumei.ac.jp/ba/entre/
(*2) 早稲田大学グローバルエデュケーションセンター https://www.waseda.jp/inst/gec/