◇ 2021年9月 休学中に見つけたマインドセット
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◇ 2021年9月 休学中に見つけたマインドセット
お久しぶりです!最後にAGOSのブログを更新したのは、2020年3月。コロナウィルスの蔓延拡大が始まり、NYCプログラムが緊急終了した時でした。
それからなんと1年半近くも経ってしまいましたが、1年間の休学期間を終え、今年8月にアメリカに戻ってきました。しばらくAGOSのブログの存在もすっかり忘れていました(笑)
しかし、久しぶりに戻ってきた大学での生活に違和感がたくさんあったので、忘れないうちに記録しておきたいと思いブログ執筆を再開させていただくことになりました!
ということで、今回の記事の目次/サマリーです。
1. そもそも休学に至った背景
a. 学問と社会の繋がりが見えず大学の意義がわからなくなったから
b. 大学生活を存分に楽しめない中で学費を無駄にしたくなかったから
c. コロナ禍に出会ったスタートアップの仕事が楽しすぎたから
2. 休学中のスタートアップインターンからの学び
a. 自分以外の誰かのためにリソースを使うということ
b. 関係者への報連相を怠らないこと
c. 正解はない + 成果が出れば何をしても良い
3. まとめ
1. そもそも休学に至った背景
休学中の経験については別の機会でまとめようと思うのですが、この記事で休学中の学びや復学後のカルチャーショックを説明する上での背景となる情報を整理していきます!
1-a. 学問と社会の繋がりが見えず大学の意義がわからなくなったから
自分のメジャーは文化人類学なので、実際に存在している社会問題に関するトピックがほとんどです。ところが、そういった社会問題に対して、「現状への言及は丁寧にするけれど、課題の提案はしない」というアカデミアの基本姿勢が、人類学者だけでなくあらゆる研究者の間で蔓延しているのを大学1〜2年生の時に感じていました。
教授たちにこのフラストレーションを相談しても、「社会問題は複雑だから、そう簡単に答えなんて出ないんだよ」という悲観的な意見をもらうばかりでした。逆に日本で働く社会人の方からは「勉強の意味が分からなくても、将来こんなに勉強できる貴重な時間はもう二度と戻ってこないから、今のうちに思う存分大学で勉強した方が良いよ」とも言われ、なんだかモヤモヤが膨らむばかりでした。
1年近く考え続けても、やはり大学で勉強していることが社会に繋がっている感覚がほとんど持てませんでした。そこで、一度学校から離れて世の中がどのように動いているのかを知りたいと思い、休学を考え始めたところで、コロナがやってきました。
1-b. 大学生活を存分に楽しめない中で学費を無駄にしたくなかった
2つ目の理由は言うまでもないですが、コロナウィルスの影響で大学のリソースをフル活用できない状況で自分の時間や奨学金を無駄にしたくなかったからです。幸い、私は柳井正財団の支援のおかげで家庭からの出費は全くないですが、せっかくの大学生活(しかも年間の学費が800万円以上)なので、十二分にリソースを活用できるときにキャンパスに戻りたいと思いました。
実際復学してから、友達からも教授からも、「去年休学したのは本当に賢い選択だったと思うよ。この1年キャンパスから離れて特に失ったものはないと思う」と言われました。笑
唯一失ったものといえば、すでに卒業してしまった友達と一緒に過ごせたはずの時間かもしれません。ただ、悲しいことに今となっては卒業した友達で定期的に連絡を取る人はいないので、休学したことで本当に重要な人とそうでない人の振り分けが自然にできたことはメリットかもしれません笑
また、休学したことで下の学年の友達や、他に休学した同級生との絆が強まったりしたので、結局 ± 0だったと思います。
1-c. コロナ禍に出会ったスタートアップの仕事が楽しすぎたから
実は、この3つの目の理由が自分にとって最も大きな影響を与えました。
2020年の3〜4月にかけて、コロナの影響で急に自由時間が増えたタイミングで、たまたま先輩のFacebook投稿を通じて見つけたのが、VARIETASというスタートアップでした。
初めて見たときは、正直怪しい就活団体かと思いました(笑)しかし、詳しく話を聞けば聞くほど、高校時代~大学進学当初に自分が思い描いていた「理想の教育」を実現できそうなビジョナリーな構想と、それを本気で実現しようとするコミュニティに惹かれていきました。
1年間とってもお世話になったので、とてもこのセクションだけでは全てを書き切ることはできません。ただ、このブログ全体の背景知識として少し参考になるかもしれないので、もし興味のある人は私のFacebook投稿を除いてみてください!
https://www.facebook.com/misaki.funada.37/posts/1261456970934843
2. 休学中のスタートアップインターンからの学び
休学中は、このVARIETASというキャリアテック (EdTech x HR Tech) のスタートアップで、コンテンツ開発から集客、外部組織とのアライアンスなど様々な経験をさせていただきました。
復学した今もゆるく関わらせていただいていますが、私が主に活動していた創業半年〜2年目で経験したことがこれまでの学校生活とあまりにも違い、苦労も学びもたくさんありました。
1つ1つの学びに対して記事1本書けるくらいの密度なのですが、ここではその一部をご紹介します!
2-a. 自分以外の誰かのために常にリソースを使うということ
社会人になったら超当たり前のことを書くのも恥ずかしいですが、休学前の自分は「自分以外の誰かのために価値を生み出す」という仕事の本質を全く理解していませんでした。
確かに冷静に考えてみれば、「学校」という環境では、お金を払ってサービスを受け取る「お客さん」として約20年間を過ごしていました。授業で勉強するのも、課外活動を通じて友達を作るのも、インターンでスキルを身につけるのも、全て「自分のため」でした。
ところが社会人として仕事をする時には、自分以外の誰かに対して価値を還元することで、自分の存在意義が認められます。もちろん自分自身の成長ややりたいことも重要ですが、「他人を喜ばせる」という考え方が全ての起点になります。
言い換えると「他の人を思いやる」というかなり根源的な哲学に行き着きます。言葉で聞くと仰々しく聞こえますが、実は大それたことではなく、ちょっとしたオンラインのやりとりだったり、情報の整理の仕方から、他人への優しさを反映させられることを学びました。
自分は、「消費者→生産者」という思考回路のシフトに慣れるのに相当時間がかかり苦労しました。でも、大学を卒業する前からこのマインドセットを身につけることができて本当に良かったと感謝しています!
ちなみに、大学に帰ってきて「お客さん」の立場に戻ってからも、教授や他の学生とのコミュニケーションの仕方がだいぶ変わったように感じます。
2-b. 関係者への報連相を怠らないこと
コミュニケーション関連で前のセクションとも関連しますが、もう1つ学校と会社の大きな違いといえば、チームワークの重要性だと思います。大学の課題でも多少グループワークはありますが、どれも短期間だったり断片的なものばかりで、最終的なGPAを決めるのは常に自分個人の成果です。一方で会社では、自分のチーム内だけでなく、部署や役割、時には組織の違う人との協働が必要不可欠になります。
また、大学の課題では課題の期日を先生が設定してくれて、授業のたびにリマインドなどしてくれます。しかし仕事の場合は、自分で設定した期日からプロジェクトの進捗状況、つまづいている課題など、細かいコミュニケーションを自分から発信することが大切です。
特に、コロナ禍でオールリモートのプロジェクトがほとんどだったため、通常の会社以上に丁寧なコミュニケーションが必要でした。
私はこの報連相が今でも苦手なのです。でも、とあるビジネス系YouTuberの「報連相しない人は、めちゃくちゃ優秀で他人の助けが必要ない人か、能力が低いのに傲慢な残念な人だけ」という言葉を聞いてから、報連相を欠かさぬよう全力を尽くすようになりました笑
2-c. 正解はない + 成果が出れば何をしても良い
学校と会社の最大の違いと言っても過言ではないのが、「正しい答えが分からない」「その答えの見つけ方も誰も分からない」ということかもしれません。
もちろん、大学の勉強でもハイレベルなクラスや研究になれば話は別だと思いますが、通常の授業のレベルであれば、基本的には教科書やGoogleがそれなりの答えを示してくれます。
しかも、その答えを自分で見つけるどころか、先輩の学生がTAをしてくれたり、教授のオフィスアワーで直接聞けるので、ほぼ常時誰かが助けてくれる状態です。(アメリカのリベラルアーツ以外の大学であればここまでの支援を受けられることも珍しいと思いますが、「学校・学生」というコンセプトとしては共通点も多いのではないでしょうか)
上記のような温室で育った私にとって、スタートアップの不安定&不確実な環境は挫折の連続でした。学校のように指示を与えてくれる人がいるわけでもなく、例え指示をもらっても、期待値の101%以上の成果を出さなければ評価されない、そんな環境の中で自分で道を切り開くためのマインドセットを全く持っていませんでした。
特に、成果を出すために、他人の力を借りてショートカットできるようになるのには時間がかかりました。学校では、学習のプロセスに自分で取り組むこと自体に価値があり、最低限のリソースで成果を最大化することは「カンニング」と呼ばれ、厳しく取り締まられています。一方会社では、成果物のクオリティさえ高ければ、誰かの力を借りたり、既存のアウトプットを徹底的にパクることは推奨されています(もちろん、ビジネスにもルールはありますが、学校よりも相当自由度が高いと思います)
初めてこの考え方に触れた当時は、全く違うフィールドでのゲームに対して混乱の連続でした笑
でもいざ大学に戻ってみると、このマインドセットを獲得したことによる恩恵ばかりです。例えば、休学前はストレスを感じていたテストに対しても「何はともあれ、明確な答えがあるし、それを知っておけば良いだけだな」と落ち着いて向き合えるようになりました。また、解読不能な考古学のラボも1人で悩むことなく他の学生と一緒に議論しながら最短で結果を出す方法を常に模索するようになりました。
3. まとめ
休学中に苦労しながらずっと思っていたことは「大学ってどれほど快適な温室だったんだろう」ということでした。大学1年生の最初の学期は教授のオフィスで号泣したりもしたものですが、実社会に比べたらこれほどまでに優しい場所はないと思います笑
そして実際に大学に帰ってきてから、休学中に得た大学に対する考えはさらに強化されました。
スタートアップの仕事で鍛えたマインドセットのおかげで、失敗や不確実性に対する耐性がついたことはもちろんですが、大学での時間の使い方もかなり効果的になった気がします。
実は今学期は、過去2年間ずっと怖がって避けていた統計、脳科学、考古学を一気に履修して苦手だった理系三昧のスケジュールです。それにも関わらず実際の体感としては、過去一番楽な学期に感じます。
こんな風に感じられるようになったのも、無駄なことに時間や自分のエネルギーを割かないように取捨選択できるようになったからだと思います。
ということで次回の記事では、休学したからこそ感じられた大学に対する違和感や、感謝できるようになったポイントについて書いてみます!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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◇ 2020年3月 NYC Program 終了
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◇ 2020年3月 NYC Program 終了
こんにちは!今日まで色々な意味で波乱万丈な時を過ごしてきました。皆さんも大変な毎日をお過ごしかもしれません。Hamiltonでは3/13から春休みなので、今はプエルトリコに向かう飛行機の中でこの記事を書いています … が、ご存知の通り、コロナウィルスの影響で春休み後の授業が全てオンラインになるため、予定よりも長く滞在することになりそうです。今のところ、日本に帰るのは早くて4月中旬、遅くて6月中旬の予定です。とはいえ、コロナが日本でも悪化しそうなので、帰国を早めた方が良い気がしています… 。
さて今回の記事は、以前予告した通りNYC Programの生活面の紹介をしたいと思います。
1. アパート暮らし in NYC Program
1-1. 共同スペースをめぐる大喧嘩
1-2. 個人的なストレス
2. コロナウィルスによるプログラム中断
2-1. 今後のプラン
1. アパート暮らし in NYC Program
前回の記事でも触れた通り、Hamilton CollegeはNYCとワシントンD.C. にそれぞれアパートを持っていて、学生がそのアパートでプログラムの間生活します。教授は個人部屋を持っていて広目のリビングルームが、私たちの「教室」として機能していました。15人の学生は、男女混合の5人ずつで、3つのアパートに分かれていました。各アパートには、寝室2つ、トイレ&シャワー2つ、キッチン、TV付きのリビングルームがあります。アメリカの地方出身の生徒や教授は、アパートが狭すぎると文句を言っていましたが、東京のマンションに比べたら相当広々とした印象でした(という自分は多摩地区の一軒家出身だけど。)ちなみに、ウォール街から徒歩5分で自由の女神が眺められるこのアパートの家賃は、月5,000ドル。つまり、1人あたりの負担は、NYCから6時間離れたど田舎キャンパスに暮らす場合と全く変わりません。そう考えると、リベラルアーツの生活がいかに贅沢で、無駄が多いかが一目瞭然だと思います。リベラルアーツ教育についての私の悩みは、以前書いた記事を参照してください。(2019年9月の記事)
さて、普段キャンパスでの部屋割りは、寮生活を監督する専門の人たちがアンケートを元に丁寧に考えてくれています。しかしNYC Programでは、完全にランダムです。元から友達同士の人達は違う部屋に分けられていましたが、それ以外では、性格や生活リズムの調査は一切なく、特別な配慮は一切ありませんでした。そうするとまぁ、問題は起こるわけです(笑)それでは、実際にアパート内の緊張感が一番高まった瞬間をご紹介します。
1-1. 共同スペースをめぐる大喧嘩
そもそも、発端となるような特定の事件は無く、日々のイライラが積み重なった結果、全員の怒りが一気に爆発したという感じでした。イライラの例としては、
- いつも同じ人がTVを占領していて自分がビデオゲームをできない
- 自分のコーヒーメーカーを共用にした瞬間に焦げ目がついて取れない
- 食事の後に皿洗いをしないからシンクが皿でいっぱい
- 食洗機の使い方がわからない(から、洗わない)
- 食洗機を回すまで汚いお皿を中にためるのが不潔で気持ち悪い
- キッチンカウンターにパン屑などが散らかっていて、常に汚い
- 冷蔵庫の中に腐りかけの食べ物が1週間以上ある
- ブラインドを閉めて寝たいのにルームメイトが開けちゃう(その逆もしかり)
- リビングルームを深夜に使いたいのにソファーで寝てる人がいて使えない
- グループチャットで連絡しても基本的に既読無視される
などなど、全て挙げたらキリがありません。それまで水面下で膨らみ続けていた全員の不満をどう処理すれば良いか分からず、私が個人的に教授に相談したところ、彼がクラス全体に共有スペースの使い方に関するリマインダーを送ってくれました。ところが、そのメッセージは状況の改善に繋がらなかったどころか、怒り爆発の引き金となってしまいました。教授がメッセージを送った次の日の日中(=みんながインターンで働いてる間)、あるルームメイトがグループチャットで現状への不満を漏らすと、そこからほぼ全員がお互いに対する攻撃と自分の立場の擁護を始めました。なんと、寮内の問題を調和するはずのRA(Residential Advisor)さえも、ブチギレ始めたのです。個人的に、この喧嘩の最大の問題点だと思うのは、全てのコミュニケーションがオンラインで行われていて、対話によるまともな議論がなされていなかった点です。教授が送った”Be kind and conscientious to one another.”というメッセージは完全無視です(笑)
というわけで、怒り爆発の4日後にルームメイト5人全員で集まり、会議をしました。約2時間半程続いたこの会議の結果、ホワイトボードで掃除担当の場所と曜日を決め、週に1回は全員で大掃除するということが決まりました。しかしこの会議の後も、皿洗いがされなかったり、団体掃除のリマインダーが無視されたりと、個人的にはストレスの多い時間が最後まで続きました。
1-2. 個人的なストレス
そこで、個人的にNYC生活の中で辛かったことをランキング形式で、明るく楽しく紹介しようと思います!(パチパチパチ)今まで自覚のなかったストレス源もあり、この経験を通して自己理解がより一層深まった気がしています。
NO.1 〜 室内の騒音
私のアパートは、1)政治経済の議論が大好きなヒスパニックの男の子、2)よく友達を連れてきてビデオゲームをしている黒人の男の子、3)常にNetflixを見てる or 家族と電話してるギリシャ人の留学生、4)常に誰かと電話してる黒人の女の子、5)基本的にオンラインで仕事してる日本人の私、という5人で構成されていました。この構成から大体想像が付くかもしれませんが、私のアパートはものすごく騒がしい空間でした。それが辛すぎて、2月の自分の誕生日には、自分のために強力なノイズキャンセリングのあるAirPods Proを購入しました。その努力も虚しく、私のルームメイト達の声はAppleの技術をもってしても対応不可能なレベルだったのです。文化人類学メジャーとしては、文化の違いを尊重するのが基本中の基本です。それを頭で理解していても、複数の人が同時に騒音を出している状況というのは、かなり精神的なストレスになりました。
騒音に対する耐性が皆無なのは、自分の家庭環境も影響していると思います。私には7つ歳上の姉がいますが、私が17歳くらいになるまで仲が悪くてほぼ交流がなかったので、幼少期は実質一人っ子のように育ちました。それに加え、口数の少ない両親は帰宅が遅く、私は小学生の時から1人で夕食を食べることがありました。夕食後も、両親は仕事をしたりTVで野球観戦したりと自由に過ごしていたので、家庭内ではほぼ物音のない環境でした。私が中高生になることには、家で過ごす時間がそもそも少なくなり、家にいても自分の部屋で勉強しているばかりだったので、他人の騒音が気になった事は記憶にありません。今思えば、高校も休み時間に勉強している人ばかりの静かな特進クラスだし、私のいとこもとても静かだし、大学生になって騒音アレルギーが発症するのも納得です。
騒音に関しては、結局最後の最後までルームメイト達に相談する事なくプログラムが終了してしまいました。言い出せなかったのは、問題が文化や性格の違いから来ていることや、自分がマイノリティーだったことが理由だと思います。ただ、騒音対策もいくつか見出しました。例えば、インターンが5時に終わってから、コワーキングスペースにそのまま22時まで残ってアパートでは寝るだけの状況を作ったりしました。どうしてもアパートにいなければいけない時は、リビングから離れた玄関エリアにある机でZoom会議をしたりしていました。それでもうるさい時は、シャワールームでバスタブに座って作業をしたこともありました。当時は気がつかなかったけれど、今客観的に見ると結構悲惨な状況ですね(笑)コロナによるプログラム中止が発表される2日前、騒音によるストレスが爆発して1人で泣くという事件もありました。高校留学中のホームステイに引き続き、この体験のおかげでより逞しくなれたと思います!というわけで、ストレスランキング1位は「室内の騒音」でした〜。
NO.2 〜 キッチンの衛生状況
できれば騒音と同立1位にしたかったのですが、ストレスの原因の第2位はキッチンの衛生状況です。これはルームメイト達の喧嘩の原因の1つでもあるので、私以外にもイライラしていた人がいたのだと思います。みんなでルールを決めた後も、レストランから持ち帰った食べ物を1週間以上冷蔵庫に放置して腐らせたり、使った皿をシンクに数日間放置したりする行動は、完全には改善しませんでした。個人的には、衛生問題に対する許容範囲がそこまで広い人を逆に尊敬するし、どういう思考回路でそれをやってるのか研究したいとすら思いました。
こういう風に私が感じるのも、やっぱり育った環境のおかげだと思います。私も小さい時は食べた後の食器をシンクに置きっ放しにして、父親から激怒されることが頻繁にありました。使った皿を数時間洗わなかっただけで小学生を怒鳴り散らす必要は絶対にないと思いますが、そのしつけのおかげで今の自分があるのだと思います。高校留学の時のホームステイ先の家族も、整理整頓や衛生面はかなりきちんとしていたので、長時間にわたってストレスを感じたのは今回が初めてでした。ただし、心理学でいうdisgust sensitivityがものすごく高いという自覚は以前からあったので、キッチンの衛生状況はストレスランキング第2位でした。
NO.3 〜 エネルギーの無駄遣い
さて、堂々の第3位はルームメイト達によるエネルギーの無駄遣いです。これは自分でもしょうもないと感じていますが、エコ界隈の人で少しでも共感してもらえたら嬉しいです。具体的なストレス源というと、他の人が電気や水の無駄遣いをするのを目の当たりにすることです。私は環境に優しくするために、節電節水など「当たり前のことを当たり前にやる」というのを日頃から心がけています。でも、毎晩リビングにある全ての電気が付けっぱなしになっていたり、ルームメイト達が冷蔵庫のドアを開けっ放しにしたり、水道出しっ放しにするのを目の当たりにすると、切実に心が痛むのです。ただし数字で見ると、個人の行動が出す資源の消費は企業の生産活動に比べると、ごく僅かです。その事実を理解していても、やはり目の前で環境破壊行動を見るのは苦しいものです。でも大抵の場合、エコ活動の布教は効果が低いだけでなく、多くの人からうざがられてしまい、環境家全体の印象が悪くなってしまいます。だから、ルームメイトに声をかけたのは学期の初めに1回だけです。意味のない闘いに自分の時間とエネルギーを無駄遣いしないというのは、最近やっと身につけたスキルです。初めはすごく難しかったけれど、去年のルームメイトやインターン先の上司に話を聞いてもらったりして、ストレス発散していました。
というわけで、以上がNYC Programにおけるストレスランキングでした〜〜!
2. コロナウィルスによるプログラム中断
私のストレスレベルが頂点に達したのとほぼ同時に、コロナウィルスがアメリカでも流行し始め、日本と同じような状況が数週間遅れで今起きています。予定されていたイベントは全てキャンセルされ、各教育機関もオンラインに移行することを決めました。私の大学は、春休みと丁度かぶったため教授はオンライン授業を準備する時間が少しだけあります。留学生以外の生徒も、既に予定されていた旅行スケジュールで帰宅した人が多くて、不幸中の幸いだったと思います。
NYC Programに関する連絡はキャンパス内の通常プログラムよりも遅れましたが、フランスやスペインの留学プログラムがオンラインに移行したことを受けて、国内のNYCとD.C. Programも中断が決められました。今のところHamilton Collegeは、「4月中旬までオンラインで授業を行う」と発表していて、その後はキャンパスでの通常運営が再開する可能性はゼロではありません。(限りなく低いことは確かですが)一方、NYC Programなど、Hamiltonが独自に運営しているキャンパス外のプログラムに関しては、再開する可能性は全くないそうです。
2-1. 今後のプラン
では、春休み後の私のスケジュールがどんな風になるのか考えてみます。前回の記事でも紹介した通り、NYC Programは参与観察などオフラインでの体験学習が肝なので、オンラインだとそもそもの目的の達成が難しいという現状があります。個人的には、遂にミネルバ大学の様なライブのオンラインセミナーを始められると内心ワクワクしていました。ところが教授が「Zoomでセミナーやっても対面と同じクオリティーにならないからやらない」と宣言したため、人種関連の学びの機会は継続されないようです(泣)実はこの教授は、私のお気に入りトップ3に入るような素晴らしい先生なので、オンラインに対する保守的な対応は少し残念でした。
授業がこれまで通り継続されないため、自主研究に使える時間が増えることになります。ただし、NYCで実際に足を運ぶことはできなくなるため、メディア中心のエスノグラフィーになるのだと思います。前回の記事でも簡単に触れましたが、”Reclaiming Veganism”というテーマをもとに、非白人文化としての菜食文化の在り方を探究していく予定です。本来、ヨーロッパ諸国による植民地支配によって、肉や乳製品中心の食事が広まったため、現在多くのPOCが菜食に対して批判的な態度を持っているのは非常に皮肉的だと思います。そういった歴史も含め、これから本格的に取り組んでいきたいと思います。
さて、NYC Programの中心的要素であるインターンシップは、現在取り組んでいるプロジェクトの終了と共に、終わらせることにしました。もちろん、オンラインでも作業が続けられるのは理解しています。しかし、このインターンで一番有意義だった時間は、ボスとの何気ない会話でした。仕事内容自体もそれなりに面白かったけれど、2ヶ月経った今となっては、仕事にも慣れてきて刺激的なことは少なくなっていました。だから、指導者のいない環境でひたすら作業をこなすだけなら、他にもっと生産的な時間の使い方があるだろうという結論に落ち着きました。とても好きな団体だったので、1ヶ月早くインターンが終わってしまったのはとても悲しいです。しかも、春休み前最終の出勤日がプログラム中断発表の前だったため、インターン先のボスと直接お別れをすることができませんでした。お世話になった彼にきちんと挨拶できなかったことは、精神的にかなり苦しかったです。でもNYCを去る数日前、空っぽのオフィスに行って私のボスの机に手紙を置いておいたので、出来る限り感謝の気持ちは伝えられたかなと思います。
授業も無く、インターンも無いとなると、あと2ヶ月間かなり時間が余りそうです。一応、以前から興味があったJUST Capitalというシンクタンクのインターンに応募しました。この団体は、株主のために利益を増やすことだけを目的とする資本主義から、様々なステークホルダー(環境、労働者、周辺コミュニティー、サプライヤー、株主)の福利を追求する経済の仕組みに変えることをミッションとしています。インターンの仕事内容は、JUST Capitalが毎年作成しているESG(Environment, Social, Governance)投資のための企業ランキングを作成するためのデータ収集と分析です。もしこのインターンに受かっても、当分の仕事はオンラインになるのでプエルトリコに残ることになると思います。もしコロナの状況が6月までに改善されたら、NYCに戻ってオフィスで働けることになりますが、どうなるか今の所は見当がつきません。
また、コロナパンデミックの状況を見て、この夏にスウェーデンでインターンをする予定もキャンセルしました。まだ夏の予定を決めるに早すぎる気もします。でも、インターンをさせてもらう予定だったスタートアップでの仕事をリモート出始めてから、自分が今学びたい内容と若干違うことに気がついていました。だから、コロナが丁度良かったというと不謹慎ですが、真っ当な理由をつけて辞めることが出来たのは良かったと思います。日本でもインターンに応募したので、もし合格したらそこでの体験も後々紹介できたら嬉しいです。
今回の記事では、コロナ大流行に対する現在の心境についてもまとめる予定でした。しかし、NYC プログラムの事後報告に想定以上の文字数が取られたため、コロナの件は次回の投稿に回します。特にコロナは、日々状況が変わっているため、もう少し様子を見た方が良いという気もしています。それでは、最後まで読んでいただきありがとうございます!
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◇ 2020年2月 NYC Program
◇ 2020年1月 プエルトリコの旅
◇ 2019年12月 2年生秋学期の振り返り
◇ 2019年9月 2年生が始まりまして
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◇ 2019年9月 2年生が始まりまして
こんにちは!そしてお久しぶりでございます。秋学期が始まってから忙しくてなかなかブログを更新できずにいました。そこで今回は、近況報告を含め、最近の考え事を書いていきたいと思います!
1. 授業
a. 履修中のクラス
b. 科目偏りすぎ疑惑
c. 授業変更のあれこれ
2. 課外活動
a. クラブ
b. 仕事
c. Greek Life
3. 高等教育の意義
1. 授業
先学期に理由も無く5クラスとったのを反省して、今学期は4クラスとっています。特にメジャーを文化人類学、マイナーを環境学にすることに決めたので、各学部の必須科目を埋めることに集中しました。全ての授業が10時半以降で且つ金曜日は授業無し、という4年生でもレアな時間割を楽しんでいます(笑)
a. 履修中のクラス
今学期履修しているクラスをざっくりと説明していきます。
@History of Anthropological Ideas (Anthropology)
このクラスは学部の必修科目であり、メジャーの学生全員が苦しむことで有名な難しいクラスです。というのも、授業内容が全て過去の学説の分析なので、主に18?19世紀に書かれた古い文章を読んでいます。ただ、17人しかいない小さいクラスで、クラスメートの6割くらいは友達なので、割と居心地は良いです。
AGlobalization and the City (Anthropology)
来学期、大学が提供するNew York City Programに参加するので、それの事前学習として取っています。新自由主義資本主義の歴史やその影響が主なテーマなので、自分の興味にドンピシャでした。24人くらいで中規模なクラスですが、活動家気質な先生がインタラクティブにしてくれるのでとても楽しいです。
BGlobalization and Agriculture (Environmental Studies)
元々私は、食のサステイナビリティーが環境学の中で一番の関心だったのでこの授業もピッタリでした。しかも教授の専門が実は文化人類学なので、基本的な論理や哲学が最初からしっくりきました。ただこのクラスは、生徒が40人もいる超大きい(Hamiltonでは30人以上のクラスは大規模です)クラスなので、あまり居心地の良い雰囲気ではないです。最近気がついたことですが、環境学ってなぜか白人の比較的裕福な子に人気の学部なので、私のクラスも留学生は私しかいないし、白人でない学生は7人くらいしかいないです。クラスが居心地悪い件について教授に相談したところ、「globalizationってタイトルに載せちゃったから経済学系の生徒がたくさん来たのかしら」って言っていました。
CLanguage, Gender, and Sexuality (Anthropology, Sociology, Linguistics, Women and Gender Studies)
このクラスは学部の必修で言語学を1クラス取らなければいけないことと、去年からジェンダー・性の分野に興味があったので取りました。授業の内容はものすごく面白いのですが、担当の教授が生徒への当たりが強くて怖いことで有名なので、落とそうか迷っています。でもこの先生は厳しい反面、多くの学びを与えてくれる評判もあるので、もう少し頑張ってみようかと迷っています。
(この記事を書いた1週間後にこの授業は落とすことに決めました。なぜか私の友達も「おーー!良かったねぇー!」という感じで喜んでくれました笑)
b. 科目偏りすぎ疑惑
リベラルアーツカレッジに通っていながらほぼ文化人類学しか勉強していないというのは、ものすごく罪の重い行為に感じます。でも去年1年間、色々とランダムなクラスを取ってみて、圧倒的に1番楽しかったのは文化人類学でした。一応、他学部の授業もしっかりチェックしましたが、あまりピンとくるクラスはありませんでした。あと、2年の春にNYCに行くのと3年の1年間は留学する計画があるので、出来るだけ早めに学部の必修を終わらせてしまいたいと思っています。このままいけば、あと卒業のために必要なメジャーのクラスは考古学の入門と卒論のクラスだけになります。せっかくのリベラルアーツを無駄にしている感は正直否めませんが、Hamiltonのオープンカリキュラムは1科目に偏ることさえ許してくれるので、neo-liberal artsといったところでしょうか(笑)
2. 課外活動
a. クラブ
今学期はクラブでの活動は少し抑え目になりました。去年リードしていた文化人類学クラブは、他のメンバーのやる気が低くて萎えたのと、私に取っても優先順位が低めの活動だったので、e-boardから抜けることに決めました。
その一方で、日本クラブは去年の倍くらいアクティブに活動しています。ただし、私がキャンパスを離れた後も活動が続いていくように、もう極力リーダーシップは取らないようにしています。Hamiltonでは色々な人が気軽にクラブを立ち上げますが、長く続いていくグループはほんの一握りなのです。スタートアップでも立ち上げメンバーが抜けると会社ごと消えるパターンが多いらしいです。だからそうならないように、今学期中にサステイナブルな団体作りを完成するつもりで動いています!
あと最近まで一番時間を費やしていたのは、世界気候マーチのオーガナイズです。とても官僚的な生徒会からはクラブとして認めてもらえていませんが、8月末から週15時間くらいかけて、ポスターを作ったり既存のクラブに協力を呼びかけたりして準備に取り組んでいました。キャンパス内で行われたストライキは約450名が参加し、アカペラグループに歌ったり、教授や生徒がスピーチしたりと、大成功だったと思います。私のルームメイトと一緒に作ったプロモーションビデオが良い感じにできたので、ぜひチェックしてみてください!(https://www.youtube.com/watch?v=fVbwoPXskHs)
(ストライキの運営メンバー。ちなみに、私の右の子がルームメイトです笑)
b. 仕事
去年は色々な仕事にアプライして落ちまくったのですが、今年は遂に主な仕事2つと軽めのものが2つゲットできました。ここでは特に力を入れて取り組んでいる2つを紹介します。
Hamilton Sustainability Coordinators、通称HSCは10人くらいの学生が雇われていて、キャンパス内でのサステイナビリティー推進に励んでいます。私はFood and Waste Committeeに所属していて、主にカフェテリアでの動物性食品の摂取量や使い捨てごみの削減や、リサイクルの推進などに取り組んでいます。この団体の素晴らしいところは、上記の活動家団体と違って、日々の仕事がキャンパス内の生活に直接影響を与えられることです。自分の好きなことをしながら給料が出るなんて、こんなに素晴らしいことはありません。
もうひとつの仕事はSocial Innovation Teamという団体で、こちらも大学内のLevitt Centerという組織に雇われています。彼らはキャンパス内の社会課題の解決を行ったり、一般の学生に対して社会起業という進路の選択肢を普及したりするのが主な仕事です。昨年までのプロジェクトでは、大学内のタウンホールで学生と当局が直接の対話を通して問題と解決策を議論するイベントを運営したり、睡眠の質を改善するためのワークショップが専門家を交えて行われていました。現在取り組んでいるのは、カフェテリアの外で起こる食品ロスの削減です。こちらの仕事も、クラブのような感覚で好きなことをしながらお金がもらえるので素晴らしいです。でもクラブと違うのは、組織的な力が強いのでより大きな影響を与えやすいということです。
c. Greek Life
大学選びをしていた時、グリークライフがあるようでほぼ存在しないのが良くてHamiltonを選びました。そんな私でしたが、気がついたら自分自身がソロリティーに所属しかけています。一般的なグリークライフは、激しい飲酒や先輩から新メンバーへの嫌がらせ等で悪い印象があると思います。ただHamiltonでは、そういった問題が起こらないように大学側から色々な対策が取られています。とはいえ、私のソロリティーはそもそも大人しいHamiltonの中でも、一番落ち着いているグループで、4年生でも存在を知らない人がたくさんいます。そんな感じなので、一般的なグリークライフのイメージとは大きく異なると思います。グリーク団体に所属するためのプロセスや、私が入ることに決めた意図などは、また別の記事で詳しく書きたいと思います。
(私のソローリティーはHamiltonで唯一、人種や経済的な多様性がある自慢のグループです!)
3. 高等教育の意義
夏に北欧で留学してから、アメリカの高等教育について疑問を感じています。過去3ヶ月程ずっと考えていることなので、ここで自分の考えを整理できたら嬉しいです(笑)
a. 実社会との隔離
この夏の短期留学はアカデミックさには欠けるものの、実際の社会で起きている事象をベースに、実際の社会に出て、そこで暮らす人とのコミュニケーションを通じて学びました。夏休みから大学に戻ってきて私が最初に気がついたことは、キャンパス内の環境が本物の世界から余りにもかけ離れていることです。高校生の時は、田舎で寮生活がしたくてリベラルアーツを選んだはずだったのですが、いざ街の中で普通に暮らす経験をすると、今住んでいる環境が不自然に思えて仕方ありません。しかし、そんな環境だからこそ全てのエネルギーをアカデミックに注ぐことができるのだと思います。というか、ボーディングスクールのそもそもの目的は現実社会を遮断することにある気がします。
b. 問題提起 vs. 問題解決
では、社会を遮断するほど大事なアカデミックでは、一体何を教えてくれるのでしょうか?Hamiltonは小規模なリベラルアーツカレッジなだけあって、ライティングやスピーキング、クリティカルシンキングなど、どの分野でも応用可能なスキルを教えてくれていると思います。その面では本当に素晴らしい教育だと思います。しかし私がフラストレーションを感じるのは、現在の高等教育が社会問題の解決に取り組むチェンジメーカーを育むためにデザインされていないことです。確かに冷静に考えてみれば、伝統があるのは良いけれど根本的な部分は200年以上変わっていません。
もちろん、「そもそも高等教育はチェンジメーカーを作ることを目指してないから文句を言うのは筋違いなのでは?」と言う論点も、一時は自分の中にありました。しかしHamiltonの8つの教育方針の中には以下のゴールが含まれています。
Ethical, Informed and Engaged Citizenship ? developing an awareness of the challenges and responsibilities of local, national and global citizenship, and the ability to meet such challenges and fulfill such responsibilities by exercising sound and informed judgment in accordance with just principles.
(https://www.hamilton.edu/academics/catalogue/educational-goals-and-curriculum)
個人的な実感として、社会問題に関する理解は4年間を通してある程度は高まると思います。確かに今まで私が履修した全てのクラスは、サイエンス系も含め、何かしら“Ethical and engaged citizenship”に触れる機会がありました。でも学生達の理解を深めるだけで、実際の行動にはほとんど繋がっていません。それは卒業生のキャリアパスや学生の日々の行動を見ていれば、はっきりと分かることです。このような知識と行動のギャップに違和感を感じています。問題について詳しく知っていても、その解決のための行動に繋がらないのであれば、教育は何のためにあるのでしょうか。でも大学側が、2000人近くいる学生それぞれのニーズに細かく対応するのは不可能なのだから、結局は、不完全な環境に自分がどう適応するかなのかなと思ったりします。あとこの問題について話した文化人類学の教授は、「アメリカ全体が資本主義の価値観に支配されているから、Hamiltonで4年間過ごしたくらいじゃ、ほとんどの人は変わらない」という風に言っていました。
c. 論理 vs. 実践
とは言っても大学における学びの場は、教室内だけではありません。課外活動や毎日の生活を通して、様々な形で成長する機会はたくさんあります。それを今学期特に強く感じるようになったのは、HSCとSocial Innovation Teamの仕事で実際の問題解決に関わっているからだと思います。むしろ私は、今学期は授業を1つ少なくとってその分余ったエネルギーを課外活動や自分の趣味の勉強に使うことに決めました。でも学業以外に集中するのであれば、大学にいないで実際に社会人と活動した方が理に適っているような気がします。そもそもアカデミックな知識そのものは、MOOCや本を使えば自力で身につけることも可能になりました。だからこそ、高等教育の社会的な目的と、自分個人としての目的を考えるのは大事なぁと思います。
d. 今の所の結論
色々考えてはいるものの、年間750万円を払ってまで大学に通い続ける理由は未だにはっきりと分かりません。(私の教授によると、Hamiltonでは学生1人あたりの実費は1,000万円くらいらしいですが、差額は大学のendowmentでカバーしているらしいです)そうは言っても、一流の教授といつでも好きな時に会えることや、色々な分野の人材が混在していることなど、大学ってやっぱりリソースに溢れています。だから自分の学びたいことをちゃんと考えて、リソースを賢く搾取するべきなのかなと思います。
大学、高等教育って一体全体なんだろうかと3ヶ月ほど考え続けて、最近まとまってきた答えは以下の通りです。
1, 社会に出る前にゆっくりと自分探しをする時間
2, リスクの低い環境、地位の下で色々なことに挑戦する時間
3, 社会人になって忙しくなる前にフルタイムで勉強できる贅沢な時間
4, 将来のために様々な分野の人とコネクションを作る時間
最後まで読んで頂きありがとうございました。学期が進むごとにますます忙しくなると思うのでこれからどれくらいブログ更新できるか未知数ですが、思い出した頃にまた投稿すると思います!
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◇ 2019年8月 夏休みの振り返り(2)
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◇ 2019年8月 夏休みの振り返り(2)
前回の記事の続きなので、イントロ部分は省略します!
1. 富の出所
1-1. デンマーク
1-2. ノルウェー
1-3. スェーデン
1-4. フィンランド
1-5. アイスランド
2. サステイナビリティー
2-1. ボトル類のデポジット
2-2. 自転車のためのインフラ
2-3. 菜食主義への態度
3. 「幸せ」の秘訣
3-1. 必要最低限のニーズが満たされている
3-2. 豊かであり厳しい自然
3-3. 生きたいように生きられる社会
3-4. 深く親密な人間関係
4. 北欧が抱える問題
4-1. 移民問題
4-2. 充実しすぎた社会保障制度?
4-3. 医療サービス
5. 「アメリカ= 海外」じゃない
1. 富の出所
北欧についての不思議はたくさんありましたが、私の中で大きかった疑問は、社会制度を充実させるための資金の出所です。アメリカのような超大企業が山ほどあるわけでもなく、西ヨーロッパのように植民地化をしまくったわけでもない(と私が思っていた)北欧の小さな国々は、いかにして豊かになったのでしょうか。
※ここから先の情報は、私の実体験や専門家ではない地元民から直接聞いた話が元になっているので、100%正確ではない可能性があることを踏まえて読んでください。しかも超超省略バージョンです。
1-1. デンマーク
・バイキング達がヨーロッパ中で略奪しまくった。
・バルト海の入り口である立地を活かして、通る船に高い税金をかけまくった。
・北欧やバルト三国周辺を侵略した。
・17世紀から19世紀にかけて、グリーンランド、西インド諸島、西アフリカ、東インドなどヨーロッパ以外の地域も植民地化した。
デンマークの植民地支配の歴史については国立博物館に行くまで全く知りませんでした。それについて初めて学んだときに、「デンマークも結局は植民地活動を通して裕福になったんだなぁ」と悲しい気持ちになりました。でもこの博物館は、過去の過ちを全面的に受け止め、現地の人々の目線から植民地支配の悪影響を伝えていました。植民地化の歴史ついてあそこまでオープンに語る国を私は見たことがないので、デンマークが自らの黒歴史と向き合おうとする姿勢に大変感銘を受けました。
1-2. ノルウェー
・1960年代に大量の石油が見つかった。
ノルウェーは自然が豊かで超エコな国として有名です。自国の98%の電力を再生可能エネルギーから補っていたり、政府からの様々な補助によって電気自動車の普及を進めるなど、環境政策がすごく発達しています。でもその資金が、石油や天然ガスの輸出によって調達されているというのは、何とも皮肉なものです。他の産油国に比べると、ノルウェーは比較的に環境へ配慮しながら石油を掘っているとはいえ、資源が尽きた後どうやって国を支えていくのか気になります。
1-3. スェーデン
・第二次世界大戦に「正式には」参加しなかったので、20世紀に国が破壊されなかった。
・事実上中立の立場だったため、両方の勢力に兵器を売りまくったり、ナチスがノルウェーを侵略するのを助けたりして儲けた。
・戦後、ヨーロッパ諸国の再建と為にスェーデンから鉄鋼が大量に輸出された。
・単純にグローバルな大企業が多いが、私は全く知らなかった。(IKEA, Sportify, H&M, Volvo, Ericssonなど)
スェーデンは他の北欧の国に比べると、あくせくした人が多く、 若干ドイツのように industrial な雰囲気がしました。(とは言っても、アメリカや日本に比べたら、まったりとスローライフを楽しんでいる人が多いです)ちなみに、スェーデンも周辺の国々を統治していた歴史があるのですが、現地の人を奴隷として扱ったというよりは、インフラや文化を整備して、その国の発展を助けたという風に解釈されることが多いみたいです。実際、エストニアやフィンランドでは、スェーデン統治の歴史はポジティブに語られていました。
1-4. フィンランド
・第二次大戦後ソビエトに対して多額の借金を、お金ではなく物資の提供で賄い、借金返済が終了後もその産業が伸びていった。
・現在はITやスタートアップが強い。
北欧は全般的にスタートアップ文化が根付いていますが、フィンランドは特にそれが強く、起業家精神がデフォルトになっている感じでした。(ITベンチャー天国のタリンと地理的に近いことも関係しているのでしょうか?)世界中の起業家や投資家が集まるSlushはフィンランド発で、学生主導で運営されています。ちなみに、今年は私もボランティアに応募したので、サンクスギビング休暇を使ってフィンランドに戻れることを願っています!!
1-5. アイスランド
・漁業
・観光?
アイスランドは2008年のリーマンショック後に国全体がほぼ破綻しています。そこからどうやって持ち直したのか、勉強不足の私には正直よくわかりません。観光業の歴史も非常に浅いです。ガイドによると、2010年の噴火を機に観光客が一気に増えていったそうです。ダウンタウンのど真ん中に住むCouchsurfingのホストに聞いても、彼女が移住した10年前に観光客はほぼ皆無だったそうです。アイスランドはしばらくデンマーク領だったので、デンマークからの恩恵を受けて発展していったのかもしれません。
2. サステイナビリティー
北欧に行った主な理由のひとつがサステイナブルな暮らしを体験することだったので、それについて私が時に感銘を受けたことを3つ紹介したいと思います。
2-1. ボトル類のデポジット
簡単に説明すると、全ての飲み物に10円から100円くらいのデポジットがかかっていてボトルを返却すると現金が戻ってくるという仕組みです。これはスカンジナビアに限ったことではなく、オランダやドイツなどヨーロッパの多くの国で普及しています。国によって多少の違いはあると思いますが、基本的に飲み物類を売る全ての店がボトル引き取りの機械を備えているので、いつでもどこでも返却が可能です。
また、小額のデポジットを気にしない面倒くさがりの人が捨てたボトルは、貧しい人(ほとんどの場合は移民)が自主的に回収してくれる為、格差の是正にもわずかに貢献しているような気がします。しかし、公共の場でゴミを漁る人が続出し、一時は物議を醸したらしいのですが、最近はクレームも少なくなっているようです。このシステムのおかげで、ボトルのリユース/リサイクル率は相当高くなり、フィンランドでは95%の缶がリサイクルされています。この制度はすごくシンプルな上に、飲料品会社やコンビニ、スーパーにとってもコストがほとんどかからないので、初期投資だけで簡単に始められるのではないかと思います。下のサイトで詳しくまとめられているので、ぜひチェックしてみてください。
(https://www.palpa.fi/beverage-container-recycling/deposit-refund-system/)
2-2. 自転車のためのインフラ
ヨーロッパの多くの街はアメリカや日本の都市に比べると規模が小さいため、自転車で簡単に移動することができます。日本にも自転車の文化はある程度根付いていますが、車道の端に引かれた申し訳程度の白線しか整備されていないことや、道端に自由に駐輪できないことが個人的には辛いです。
それに比べてヨーロッパの一部都市では、チャリ専用レーンや信号が用意されています。また路上駐輪を規制する法律が存在しないため、駐輪場を探す手間がかからないのも魅力的でした。(ただし、これは人口密度が低いから可能なことであり、日本でやったら大変なことになると思います)さらにシェアサイクル、シェアスクーターも人気で、複数の会社が競い合っていました。シェアサイクルは、乗り捨てできるタイプと特定のステーションに返却するタイプがあり、後者は日本でも何度か見たことがあります。自転車は車よりも環境に優しく、公共交通機関よりも安く、心と体の健康に良いということで、街の政策として推奨されていたのが興味深かったです。
2-3. 菜食主義への態度
そもそもヨーロッパの都市はかなりリベラルで、菜食中心の生活をするのが非常に簡単です。その中でも北欧、特にスェーデンはぶっちぎりでヴィーガンの文化が定着しています。特に環境問題に興味のない普通の人でも、「まぁ肉は毎日食べる必要はないよね。特に牛肉は良くないね。」とか「大量生産の乳製品じゃなくて地元産のHappy Cowから作られた商品しか買わない。」と言う人にたくさん出会いました。さらに、意識高い系なスーパーやレストランが菜食に特化しているのはもちろんですが、Burger KingやMcDonald’sなど大手ファストフードチェーンでも動物性製品を使わない料理を提供しているのが印象的でした。こうしたビジネスからのアプローチは、ヨーロッパでは頻繁に見られます。さらにスェーデンでは、博物館など公共の施設が菜食による環境保護を大々的に訴えていて、感動しました。
日本ではまず菜食主義がほとんど認知されていないし、アメリカでも一部の地域を除いては、ヴィーガンを揶揄する文化がメインストリームだったりします。だから北欧で、ヴィーガンもそうじゃない人達も、自分のできる範囲で環境に優しい食生活を送る姿に勇気をもらいました。
他にも環境保護のためのユニークな取り組みは紹介しきれないくらいたくさんあります。文化人類学者的には、そもそもなんで北欧人がエコな価値観を大事にするんだろうってずっと疑問でした。1つヒントになりそうなのは、自然と触れ合う機会が多いことです。ほとんどの家族が森の中にサマーハウスを持っていて、そこで夏の間こもるのが定番の夏休みらしいです。ダウンタウンから20分くらい離れると、高尾山並みの自然があって、屋外でピクニックをしている人をよく見かけました。そういう環境で生まれ育つと、自然との共存を目指す価値観が育まれるのかもしれません。また多くの北欧人にとって、環境に優しく生活するために特別な努力をしているという感覚はなく、「責任のある市民として、ただ当然のことをしているだけさ」ということをよく耳にしました。
3. 「幸せ」の秘訣
北欧の幸せ度が高いことについても、自分なりの解釈を4点まとめます。私は大学が終わってから北欧に行く間に『世界幸福度ランキング上位13カ国を旅してわかったこと』、”The Little Book of Hygge”、“The Almost Nearly Perfect People”を読みました。これら本に書いてあったことと私が北欧で体験したことは基本的に被っていたので、興味がある人はオススメです。
3-1. 必要最低限のニーズが満たされている
社会保障制度が充実している北欧では、医療から教育まで様々なものが無料です。特に高等教育になると、学費が無料なことに加えて、学生は政府から生活費をもらえます。実際、私がデンマークで泊めてもらった家庭は、お父さんは博士号、お母さんは修士号取得中の学生にも関わらず、庭付きの一軒家で2人の幼児を育てていました。もちろん、公共サービスが充実している分、かなり高い税金を納めなければなりませんが、ほとんどの人は高い税金を気にしていないようでした。むしろ国民としての義務を全うしていることに誇りを感じているくらいです。またスカンジナビアは日本のように治安が良く、街も綺麗なので、日々の些細なストレスも少ないと思います。普通に生きていればホームレスになる心配もないので、当たり前のものが当たり前に保障されているということが幸せの鍵なのかもしれません。
3-2. 豊かであり厳しい自然
ここまでにもう何度か触れていますが、北欧は本当に自然が豊かです。私も、毎朝アパートの裏の公園でヨガをしたり、授業の後に公園の芝生でのんびりしたり、とにかく緑に囲まれて生活していました。それも、東京にあるような人工的に植えられた緑ではなく、ほぼ手付かずの自然です。コンクリートに囲まれながら都心に暮らしている時には決して感じられない何かが、北欧の街では感じられます。(もちろん、自然から得られる幸福度には個人差があると思いますが)
また私が訪れた6?8月は、ほぼ毎日が晴天で気温も17〜27度くらいが多かったです。今年のヨーロッパは異常に暑い時期もあり、コペンハーゲンでも30度越えの日が多少ありましたが、基本的には日本の5月か10月くらいの気候をイメージしていただくと分かりやすいと思います。また緯度が高い関係で夏は日照時間が長く、毎日4時から22時半くらいまでは明るかったです。夏の様子だけ聞くと北欧は楽園のようなのですが、反対に冬は、ひたすら暗くて寒くて風が強いのです。しかもデンマークや南スェーデンだと雪すら降らないので、Hamilton がある北ニューヨークをバージョンアップさせた過酷さです。フィンランドとスェーデンが世界トップ2のコーヒー消費国であること、フィンランドの大人の自殺率が日本よりも高いこと、そしてスカンジナビア全体的にアルコール消費が激しいことなどは、厳しい気候の影響なのかもしれません。色んな北欧人に ”How do you deal with darkness in the winter here?” と聞いた時、圧倒的に多かった答えは”We don’t !!” でした(笑)
さてここからは私がニューヨークで得た実体験ですが、天気があまりにも最悪だと、人はちょっとしたことで大きな幸せを感じられるものです。例えば、1週間ずーっと日光を浴びられなかった後に、ほんの一筋の光が空から降りてきたのを目撃すると、その日1日中テンションが上がったりします。また、曇りでも雨さえ降ってなければ「よし今日は天気が良いな!」と思えるし、?5度以上の気温は「暖かい」と思えるようになります。幸せとは何かを突き詰めると、期待と現実との差がプラスかマイナスかっていう話だと思います。だから期待度の最低値が低ければ低いほど、何気ないことに幸福を感じられるようになるのかもしれません。
3-3. 生きたいように生きられる社会
北欧の人が幸せな理由の1つは、彼らが生きたいように生きられることだと思います。北欧の社会はなんとも奇妙で、アメリカの個人主義と日本の集団主義の完璧な中間です。つまり、アメリカのように個性を尊重しつつ、日本のように思いやりや尊敬、謙虚さを大切にする文化があるのです。例えば、LGBTQ、宗教、菜食主義、パンクミュージック、結婚観、キャリアパス、ヒッピー文化、どれをとっても「お好きにどうぞ」という感じで、メインストリームの人たちが少数派を攻撃することはありません。もしかしたら、変わり者を心から受け入れているのではなく、シャイで声を上げる勇気がないからそっとしているだけなのかもしれません。仮にそうだとしても、互いの違いを否定しない文化は素晴らしいと思いました。
私はアメリカの個人主義は好きですが、弱いものを切り捨てる資本主義的な競争社会に対しては、息苦しさを感じます。しかし社会主義な北欧には、年齢、ジェンダー、学歴、職業などのヒエラルキーがそれほど強くは存在しません。実際、スカンジナビア全体としてヤンテの掟(http://minairo.twilight.se/law-of-jante/)から来る「他の人よりも特別だとか優れていると思っちゃいけない」という考え方があるし、スェーデンにもLagom (Not too much, not too little)という言葉があります。私がスカンジナビアの大ファンであることを伝えても、ほとんどの人は日本人のように謙虚な態度で否定してきました。もちろん日本と同じように、並外れた才能を持って目立つ人が揶揄されてしまう風潮もあると聞きました。日本とアメリカの良いとこを合体させたような社会に感じます。
さらに、日本ともアメリカとも違うのは、自分のために使える時間が多いことです。学校の宿題が少なかったり、退社時間が早かったりするし、週末と休暇中はもちろん仕事しません。これも生きたいように生きられる社会を作っていると思います。高校も大学もひたすら勉強と課外活動に追われる日々を送ってきた私にとって、毎日17時前には帰宅して自由に過ごせる生活って正直想像がつかないです。
3-4. 深く親密な人間関係
もうひとつ日本と北欧の似ている点を挙げるとすると、シャイな性格とそれによって起こる閉じた人間関係だと思います。もちろん北欧内でも多少の差はありますが、アメリカや南ヨーロッパに比べたら、静かで勤勉な人が多いと思います。実際に私が住んでいる間も、見知らぬ人からは全く話しかけられなかったし、みんな目があってもニコッとしないし、そもそも基本的に目は合わせません。社交的になるためにお酒の力を借りるところも日本と似ているところがあるのではないでしょうか。みんな人見知りだからアイスブレークには時間がかかるけれど、一度友達になってしまえば深い友情が長く続くのがスカンジナビアの人間関係あるあるらしいです。そういう訳だから、北欧人の多くは高校や大学の後は親しい友達を新たに作ることがほとんど無いと聞きました。デンマークやスェーデンに来た留学生や移住者と話した時も、現地人と友達になる難しさを聞きました。すでに構築されたネットワークの中に籠ることに対して良し悪しはあると思いますが、安定的な人間関係があるのは幸福感に直結していそうな気がします。
北欧人とは対照的に、アメリカ人は初対面でもsmall talkするし、最初からフレンドリーでハグ好きな人も多い印象です。けれど少なくとも私の知っているアメリカ人の多くは、最初のアイスブレークは一瞬でできるけど、ちゃんとした友情を築くのには相当な時間とエネルギーを要します。例えばHamiltonのキャンパス内では、顔見知りの人に会っても赤の他人のように通り過ぎるという謎な現象が多発しています。さらに私の愛したスキー部でさえ、20人くらいの小さな部にも関わらず、シーズンが終わった後は全く顔を合わせないし、すれ違っても挨拶してくれないチームメイトもいます。また、アメリカに住んだことがある北欧人は皆、「アメリカ人は最初すごく優しいけど結局表面的な人が多かったなぁ」と嘆いていました。
4. 北欧が抱える問題
4-1. 移民問題
一見ユートピアのようにも見えるスカンジナビアですが、もちろん問題も色々あります。私が話を聞いたヨーロッパ人達は、大量の移民による混乱が一番大きな社会問題だと口を揃えて言っていました。北欧も例外ではありません。貧困は確実に増えているし、現地語を喋れない子供が満足な教育を受けられない事情もあるそうです。あと、必ずしも全ての移民が現地語を学びたがらず、現地の文化に馴染む努力を怠っているように感じるヨーロッパ人も多いそうです。語学学校は無料で政府が提供しているのですが、定期的に通って修了させるための拘束力がないため実際に通う人は多くないらしいです。また、移民について少しでも批判的意見を述べると人種差別者として非難され生産性のある議論ができない、とヨーロッパの各所で聞きました。
4-2. 充実しすぎた社会保障制度?
また社会主義の全般の懸念点として、働かない人や大学にずっと残る人が増えるという意見があります。確かに、学費が無料なこと、メジャー変更がアメリカの大学より時間がかかることなどがあって、4年間以上大学に残る人は多いそうです。個人的には、卒業に時間をかけること自体は必ずしも悪くないと思いますが、公立大学ですので税金をたくさん使っているという事実はあると思います。また失業率についてはOEDCのサイトをググってみると、確かにスカンジナビアは日本やアメリカと比べて失業率が高いことがわかります。
(https://data.oecd.org/unemp/unemployment-rate.htm)
ここで注目したいのが、先ほども述べた大量の移民の問題。もちろん特別な技能があり就職できる人もいますが、基本的な教育バックグラウンドを持たない人も多く、PISAのテストから学力格差もはっきりと見てとれます。(http://publications.jrc.ec.europa.eu)そこで今度はOECDのサイトから移民(現地生まれでない人)の失業率を調べてみました。すると、デンマークが10.6%、スェーデンとフィンラドが15%台なのに対し、アメリカは4%です。
(https://data.oecd.org/migration/foreign-born-unemployment.htm)
これらのデータから色々な解釈ができると思いますが、難しい問題なので私はもう少し勉強して自分で考えたいと思います。それにしてもヨーロッパ内の人の流動性は本当に高く、難民問題に関わらず、多文化カップル、留学、海外就職、等がとても盛んです。それに比べたら、日本は今も鎖国状態に近いなぁとすら思えてきます。
4-3. 医療サービス
最後にもうひとつスカンジナビアの問題として挙げられるのは、医療サービスの欠陥です。日本でも地方の深刻な医者不足や医師の過労などが問題になっていますが、北欧の問題は似ているようで若干違います。まず北欧の医療費税金によって賄われているため、余程の重態でないと医師に取り合ってもらえないそうです。例えばインフルエンザでも診察まで5?6時間待たされたことや、腕の骨折を次の日まで診てもらえなかった話を聞きました。本当に命に関わるような場合には優先的に手当てしてもらえるらしいのですが、そうでない場合は4時間以上待つことが普通らしいです。この問題について細かい原因は分かりませんでしたが、医者のワークライフバランスや長期休暇がきちんと確保されているのが理由の1つではないか、とスェーデン人の教授が言っていました。例えば、彼女の友達が7月に出産を迎えた時は、陣痛が来ても救急車が来なかった上に、空いているベッドを探すために複数の病院を転々としたそうです。7月のストックホルムといえば夏休みで街中が空になり、お店も病院もほとんどが稼動停止になります。また、出産のサービスも必要最低限のみしか与えられないため、アメリカから移住した女性はそれについて不満を漏らしていました。
2ヶ月半北欧で過ごして分かったことは、彼らもたくさんの問題を抱えているということです。他の地域に比べるとあからさまに見える問題が少ないだけで、決して全ての人にとってのユートピアではありません。才能を発揮してお金持ちになりたければアメリカの方が良いと思うし、もっとフレンドリーでテンション高めな文化が好きだったら、南の方の暖かい地域が良いかもしれません。この夏の体験を通して、「資本主義vs社会主義」みたいな二項対立で考えても上手くいかないということを再確認した気がします。
5. 「アメリカ= 海外」じゃない
私にとってこの夏最大の学びは、アメリカ以外の「海外」を体験できたことです。高校留学をするまでの私は、海外や留学といえばとりあえずアメリカを思い浮かべ、政治や経済や文化の中心も全てアメリカだと思っていました。でも3ヶ月間北ヨーロッパで過ごした今となっては、アメリカの文化や社会制度について強い違和感を感じるようになりました。その一方で、ベラルアーツ教育への愛と誇りがより深まったことも事実です。母国である日本についても、また新しい視点から見つめることができるようになりました。
私が旅や留学が好きなのは、自分の中の「当たり前」がぶち壊される感覚が楽しいからだと思います。トビタテの研修では「若いうちに最低3回留学しなさい!!」と聞きましたが、本当にその通りだと思います。世界は見れば見るほど謎が深まり、自分の勉強不足を痛感させられます。留学先としてたくさんある選択肢の中からアメリカという国を選び、そこのリベラルアーツカレッジで学ぶことの意義と特権を再確認できたように思います。この必要以上に恵まれた環境の中で、この夏の学びを少しでも行動にしていけたら嬉しいです。
今回の記事は、私の北欧愛が強すぎて少し熱くなってしまいました(笑)来週から大学生活2年目がスタートします。今はとってもワクワクしていますが、忙しいスケジュールに戻れるか心配です。ここまで長い記事を読んでいただきありがとうございました!
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◇ 2019年8月 夏休みの振り返り(1)
◇ 2019年8月 1年目を振り返って
◇ 2019年7月 Hamilton Collegeを選んだ理由
◇ 2019年7月 はじめまして!
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