(1) PSYC 110 - Principles of Psychology
心理学の入門クラスといった位置付けで、基本的には教科書を読んできて、「こんなことが書いてあったよね」という様子で珍しく講義に重点のおかれている授業でした。もともと興味がある分野だったこともあり、内容自体は面白かったのですが、基本的に教科書をなぞるという講義が多かったため時おり退屈に感じてしまい、また、このクラスが月水金の8時半からと比較的朝が早かったこともあり、学期が進むにつれて段々と真剣さが薄れてしまったのは後悔しているところです。
というのも、期末試験の代わりにレポートがあり、その時にblindsightという不思議な症状を題材として選び、教科書に書かれていた「意識」の定義にどういった変更が必要かということを考え、オフィスアワーに行って教授と話していた際に、彼女の視点や意見がとても興味深かったのです。もっと授業中の雑談のような部分に注意を払って、積極的に教授のオフィスまで足を運べばよかったなぁと思っています。
雪の中のチャペル
(2) FREN 204 - Intermediate French
カールトンでは生徒に様々な教科に触れてほしいという意図のもと(だと勝手に思っていますが)、general requirementという、卒業までにこれこれこういう分野の授業を幾つ取らなければならない大きな「必修」のような制度が存在しています。その内の一つに第二外国語も含まれており、フランス語・ドイツ語・スペイン語・ロシア語・アラビア語・ギリシア語・ヘブライ語・ラテン語は204という4つ目のレベルまで、日本語・中国語は205という5つ目のレベルまでとることで、この第二外国語という必修枠が埋まります。
秋学期に言語のレベル分けテストがあり、当然ながら日本語205のレベルはクリアしていたため、わざわざ言語を取る必要はなかったのですが、フランス語を「ちゃんとやりました」という水準まで頑張っておこうと、また、カールトンのフランス語圏への留学プログラムへ応募する条件として204が要求されているということもあり、フランス語は先学期に続いてとっていました。
この授業では文法は毎授業の宿題で復習をすることはありましたが、本を読んでそれに関するエッセイを書いたり、それぞれのテキストに沿った内容でプレゼンをしたりというのがメインで、フランス語「で」学ぶというのはなかなかに面白い経験でした。エッセイの一つでAu Revoir, Les Enfants (邦題:さようなら子供達)という作品について、書籍と映画との違いにも着目しながらタイトルの意味を考える機会がありなかなかに大変でしたが、自分が納得のいく解釈にたどり着いた時には非常に満足感があり、自分は映画についてじっくり考えるのが好きなのかもしれない、とも思われました。第二次対戦中のフランスの中学校での実話をもとにした話で、個人的には考えさせられることも多かったので、もし良ければご覧になってください。
(3) PHIL 225 - Philosophy of Mind
アメリカの大学へ出願の際、アゴスでお世話になったエッセイ指導の先生と話しているうちに徐々に興味が出てきた分野である哲学に、個人的な興味のある「心」という観点から触れてみようと思い、とる事にしました。結論から言ってしまえば、「わかるときは面白いし、わからないときは面白くない」という小学生並みの感想になってしまいますが、この授業では特にこれが顕著でした。
本に書いてある文章の構造はわかり、意味も取れるけれども筆者が何を言ってるかわからない、という事が度々あり、その状態で授業に足を運ぶものの、基本的にはずっとディスカッション形式だった中で、他の学生の質問・意見が理解できず、それが積み重なって教室で何が起こっているのかわからなくなる、という負の連鎖に陥りかけました。
ただ、出来る限りオフィスアワーに足を運び、気になった点や面白いと思った点について教授と話をするうちに、少しずつながらも何が起きているのか理解ができるようになり、 ディスカションでの他の学生からの質問・意見を聞きながら、その視点の鋭さに驚かされる、という好循環に入る事ができました。実際、教授と話をしていると、筆者の主張の一部が自分の理解と真逆であった事に気付かされたり、それぞれの読み物に関連した興味深い内容を教えてくれたり、授業だけではわからなかったことをたくさん学べました。
(4) PE 158 - Rock Climbing
カールトンのgeneral requirementには体育の授業も含まれており、運動系の部活やクラブに入っていない限りは、卒業までに4つ取らなければいけません。4年生になってもPEの単位が足りないばかりに最後の学期で複数も体育の授業をとる羽目になる人も一定数いるらしく、同じ轍を踏まないようにとロッククライミングに挑戦する事にしました。上の3つの授業が月水金であった中、この授業は火曜・木曜の3時過ぎから1時間ずつだったため、翌日までの宿題をやる際の丁度いい息抜きともなりました。中高時代にロクに筋肉をつけなかった僕にとってはなかなか大変で、授業後には腕がプルプル震えるほど疲れてしまうこともありましたが、その裏返しで達成感もひとしおでした。
(5) MUSC 187 - Carleton Orchestra
general requirementの一つにArts Practiceという項目があり、演劇・音楽・美術などの普通の授業で6単位をとるか、音楽のアンサンブルやレッスンといった1単位の授業を6つ積み重ねるか、どちらの方法でもこれをクリアする事ができます。僕はこの制度についてあまりよく知らなかったのですが、何となくながらも続けてきたヴァイオリンでオーケストラに入ってみようと思い、秋学期に続けて冬学期もこの授業を取りました。
2年生の友達に聞いたところ、学期ごとに9週間かけて週2回の練習で3曲ずつを行うとのことで、冬学期はロッシーニのオペラ《セミラーミデ》序曲・ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第8番・シベリウスの交響曲第3番の組み合わせでした。
これは秋学期のコンサートの様子ですが、見ていただければ明らかなように素晴らしいホールで、これを普段の練習から使えるというのは非常に恵まれているなと毎回の練習のたび感じずにはいられません。このホールを含めて、音楽・映像制作・演劇といった学部のオフィスはWeitz Center for Creativityという非常に新しい建物にあり、防音の個人利用が可能な練習室が地下に10室以上、その半分以上にはグランドピアノがおかれているなど音楽系に限っても、全校生徒数2000人の大学とは思えないほど設備は充実しています。
留学生オリエンテーション
カールトンの授業開始は9月11日からでしたが、僕は8月31日に渡米しました。羽田空港から直行便で12時間ほどするとそこはミネアポリス・セントポール空港。リュックサックを背負った状態でスーツケース2つとヴァイオリンケースを両手で何とか運び、大学から来たシャトルに乗って、キャンパスで行われる留学生オリエンテーション(ISO: International Student Orientationの略)へ。寮の鍵やOneCardと呼ばれる生徒IDカードを作り、部屋に荷物を置いてからSayles-Hillという建物へ向かい、そこのちょっとしたスペースで他の留学生とピザを食べながら歓談した後、長旅の疲れと時差の影響もあって眠りにつきました。
翌日の朝食では留学生と付き添いの保護者が全員ホールに集められ、Dean of the Studentsという校長(学長とは別)のような立ち位置の人や、Office of Intercultural & International Life (OIIL)という留学生担当局のようなもののトップの人などからの挨拶がありました。
新入生週間
ISOが終わると同時に、新入生週間(NSW: New Student Week)が始まりました。NSWでは新入生10人程度に対して、NSWリーダーや、キャンパス内の各オフィスの学生スタッフなどの上級生が6人程度のNSWグループに全員が割り当てられ、そのグループごとでの活動が大半を占めます。
スティーブン・ポスカンザー学長(http://grew-bancroft.or.jp/news.html?post=115 3月7日にグルー・バンクロフト基金のシンポジウムで登壇されます)の歓迎スピーチに始まり、NSWの中で最も壮観だったイベントとなります。その紹介をする前に、ひとまずカールトンの特徴の紹介をば。
この写真は大学のウェブサイトから持ってきたものですが、上の壁に貼ってあるバナーに注目してください。National Champions 2017 Division I Ultimateと書いてあります。そう、カールトンのアルティメットフリスビーチームは一般生のみで構成されているにも関わらず、スポーツ推薦生のいる他の強豪校を抑えて全米1部(3部まで存在)で優勝しているのです。理由はわかりませんが、フリスビーはカールトンでは一般的な、それなりの人気を誇るスポーツで、その影響はなんとNSWのアクティビティにまで及んでいます。
とはいえ、NSW中には真面目なセッションも毎日のようにありました。Gender and Sexuality CenterやOIILの学生スタッフが登壇して、多様性に関する様々なエピソードを語り、NSWグループごとに集まってそれについて議論する中で、自分の意見を言うということへの抵抗を少しずつなくすことができ、また、ひとくちに「アメリカ人」といっても非常に大学までの道のりが多様だという当たり前のことに対する認識が深まり、その後の適応に非常に役立ちました。こうしてかなりの時間を一緒に過ごしたグループ内の同級生や上級生とはなんだかんだ今も時々話しているのは、彼らとの出会いが偶然だったことを鑑みてみれば不思議なものです。
このままでは幾ら話しても終わりがないので、残念ながらNSWの写真へのリンクを貼って秋学期へと時計の針を進めることにします。(https://apps.carleton.edu/newstudents/nsw/2017photos/)