Rite of Passage
卒業式の前日にはRites of Passageという格好良い名前のPOC(People of Color)の卒業式が行われました。白人以外の生徒が卒業するのを祝って、POCの生徒と家族が招かれました。このようなイベントが果たして人種差別を軽減するのに繋がるのか私自身は複雑な思いでしたが、Rites of Passageは楽しく感動のプログラムでした。ミネアポリスで役者をやっているマカレスターの卒業生のスピーチ、原住民の方のダンス、最後には家族と生徒が自由に発言する機会が設けられました。POCには卒業式の際に首の周りにかけるカラフルなストールが献上されました。
それがアメリカに来て様々な人種が交わる中、白人がマジョリティーの世界では私は相変わらずマイノリティーですが、そのマイノリティーの幅が広がりました。日本にいた頃は両親が中国人であることはあまり話さないよういしていましたが、アメリカでの私の自己紹介は
"Hi I’m Haruka. I’m from Japan and my parents are from China."
となりました。両親が中国人であることは私のアイデンティティの中核にあり、私が誇りに思っているからです。それを堂々と胸を張って誰にでも言うことができることに私は安心を覚えました。
ただ、一方で、韓国のインターナショナルスクールからマカレスターにやって来たK君は逆にマカレスターに来て閉塞感を覚えてるそうです。韓国で生まれ育ちインターの学校に行ったとしても、韓国で彼はマジョリティーです。アメリカに留学した彼はいきなりPOC(People of Color)という意味不明なレッテルを貼られ、アジア人としてマイノリティーで過ごさなくてはいけません。特に、マカレスターが位置するミネソタ州は中西部で白人がマジョリティーの世界です。生徒もどうしても大半が白人になってしまいます。
その特徴として、同じ価値観を持つ者としてマカレスターの卒業生はお互いで結婚する確率が高いようです。
マカレスターの新聞Mac Weeklyに書かれていた記事によると、1970年から2007年の卒業生でインタビューに答えてくれた人の間で31.4パーセント(高い!)の人が大学で将来のパートナーと出会ったとのことです。
"Macalester Anthropology professor Dianna Shandy conducted a survey of married Macalester alumnae, who graduated between 1970 and 2007. Of those interviewed, 31.4 percent met their partner or spouse in college."
(疫病学を勉強する身としてはvolunteer biasやらselection biasやらを思い出します。)
神経科学のセミナーの授業では卒業論文の発表をしました。Clinical Decision Support System for Neurological Disordersが研究課題で、Clinical Decision Support System(医療の現場で活用されるコンピューターシステム)に使われるアルゴリズムが如何に神経疾患の診断をより正確にするために活用されているのかを研究しました。沢山あるアルゴリズムの中でも、特にArtificial Neural Network、Decision Tree、Support Vector Machine、Naive Bayesという4つのアルゴリズムについて調査しました。さらに、それらのアルゴリズムがどのようにして世界で神経疾患で苦しむ人々の役に立つポテンシャルがあるかについて討論しました。発表には私の友達と神経科学専攻の4年生が集まり、友達からのサポートを感じました。先週末にはポスタープレゼンテーションを神経科学の会議で行いました。
上記の例では、何を幸せとし、何が自分を幸せにするのかを考え、如何に日々の中で幸せを見つけ出すのは人によります。私の大家さんにとって、人との関わりを深めることこそが最も大切なのだと思います。
もう少し詳しく話すと、私の大家さんは認知症の老人と関わる仕事をしていて、家族に見捨てられ1人で生きる老人を無数見てきました。とある日、職場で大家さんは70代後半の女性が部屋の隅にある誰のか分からない山盛りの服を畳んでいるのを見ました。持ち主不明の洋服を何故畳んでいるかその女性に聞いたところ、彼女は
“I just want to be some use” (誰かの役に立ちたいだけなの)
と言ったそうです。老人ホームを訪問してくれる家族が蒸発し、体が思うように動かず、誰かの役に立ちたいだけの彼女の発言を大家さんは一生忘れられないと言います。
音楽鑑賞の授業は1年生レベルのクラスであるにも関わらず、クラスの半分以上の生徒が上級生に占められています。マカレスター大学ではGeneral Requirementsと言って、卒業前に芸術や言語の授業を取ることが義務付けられています。例えば、フランス語専攻の生徒でも理系のクラスを少なくとも3つは取らなければいけません。(同様に、理系の生徒も必ず文系のクラスを取らなくてはいけません)。よって、生徒は卒業前に社会科学の授業を3つ、自然科学の授業を2つ、芸術関連の授業を3つ、国際関係の授業を1つ、アメリカ関係の授業を1つ、ライティングの授業を3つ、論理思考の授業を3つ、言語の授業を6つ取らなくてはいけません。しかし、多くの留学生は英語以外の言語を取得しているため、言語の授業を6つ取らなく良いと決められています。授業ごとにGeneral Requirementsのどのクラスか決められています。例えば私が先学期に履修していた博物館人類学の授業は芸術関連の授業として登録されていました。私は卒業前に最後の芸術関連の授業を履修しなければならなかったため、音楽鑑賞の授業を選びました。同様に、4年生で3つの芸術関連の授業が満たされていない生徒がこのクラスを履修しているようです。
授業の内容としては、17世紀後半からの西洋の音楽を勉強しています。バロック時代を代表するバッハ及びヘンデルから始まり、まずはバッハの”Little Fugue” in G Minor Organ及びSuite #3 in D MajorとヘンデルのThe Messiahを代表曲として勉強しました 。クラシック時代を代表する作家としてモーツァルト、ハイデン、ベートベンが選ばれモーツァルトのSerenade in G MajorとDon Giovanni、ハイデンのSymphony No.94 in C Major、ベートベンのSymphony No.5を学びました。音楽初心者でも分かりやすいように先生が身振り手振り使って解説してくれて楽しい授業です。
読書家のあなたにはお馴染みのA Very Short Introductionシリーズの本です。Globalizationの参考教科書として授業で使われました。初めての英語での授業にビビりまくり、授業が始まるオリエンテーションの期間から読み始めていました。
その後の学期では、比較経済学の授業でペーパー執筆に苦労し、朝の7時に教授のオフィスアワーに行って泣きつき、締め切りの前日まで教授にメールして質問をしたことは今でも覚えています。この教授はふわふわした人で、ペーパーについての質問をしたところ、
“Amercian basball player/ manager Yogi Bera wouls say : "When you come to a fork in the road, take it." (メールで返ってきた内容をそのままコピペしてます。baseballくらいちゃんとスペってくれ。)
と返って来ました。質問に答えてくれ、意味が分からないよ、最早ふざけるなよと心の中でぼやきながらも、オフィスアワーに行き続け、メールをし続けなんとか大量のペーパーを書き終えることができました。当時RA(寮に住む下級生の面倒を見てくれる上級生のリーダー)だった4年生の生徒が彼の授業を履修していたことが判明し、彼女の元に泣きつき過去のペーパーを見せてもらって書く際のコツを教えてもらったりもしました。
授業の他にも、今学期が終わるまでに少なくとも10冊以上の学術的本を読もうという試みから、授業が始まった先週から公衆衛生関係の2冊の本(Ethan Wattersの「The Globalization of the American Psyche: Crazy Like Us」及びT. R. Reid 「The Healing of America: A Global Quest for Better, Cheapter, and Fairer Health Care」)を読みました。
マカレスターでは毎年の冬にウィンターボールという学校主催のパーティーが開かれます。今年は Minneapolis Institute of Artという美術館を貸し切って、そこが会場となりました。学校からバスで出発し 20分程離れた場所です。お酒を飲みすぎて気持ち悪そうにしている生徒からダンスをして楽しむ生徒まで、皆それぞれの形でウィンターボールを満喫しているようでした。
Confronting Global Hatredの授業では、毎週1冊本を読み生徒がプレゼンテーションを行う前半学期の課題が終わりました。後半学期では、生徒それぞれが卒業論文のプレゼンテーションを行いそれらについて討論します。私はプレゼンテーションを休み前に行いました。私の卒業論文の研究課題は”how might a risk assessment algorithm used in the criminal justice system potentially harm those it is assessing and the society they seek to return to?”です。現在、アメリカではアルゴリズムが被告人の再犯率を予想し数値化するシステムが地域ごとに取り入れられています。裁判官はその数値を参考に量刑を下します。そのアルゴリズムの問題として、白人に比べ、黒人の被告人は再犯の可能性が高いと判断される傾向があると証明されました。私はそのようなアルゴリズムが被告人の人生を如何に左右し、社会にどのような影響を与えるかを調査しています。
Indigenous people of the Arcticの講義ではANCSA(Alaska Native Claims Settlement Act)という、アラスカ先住民が州政府及び連邦政府に請求した不動産などの設定方法が話されています。ANCSA設立後、アラスカは地域によって分けられ、それらの地域は会社として利益を上げ、その利益を先住民に配当金として分けられることが決められました。一方、グループプレゼンテーションではカナダに在住する先住民のコッパーイヌイットの現状について発表しました。西洋化された教育を受けた若者が伝統的な社会と西洋化された社会の間挟みになって鬱状態となることが見受けられます。北極付近に住む先住民にしばしば見られますが、若者が現実逃避のため、お酒や薬物に溺れる悲しい現状があります。
Museum Anthropologyでは生徒と教授が協力して1992年ペルーで起きた惨劇について学内でポスター展示会を行う予定です。ペルーは長い間に渡って、フジモリ大統領によって統治されていました。特に1992年に様々な惨劇が起きます。15人の民間人が誤殺されたバリオス・アルトス事件、学生と教授が殺害されたラ・カントゥタ事件、先住民女性に対して強制的に行われた不妊手術などを批判したポスターを学内で展示します。
Confronting Global Hatredの授業では前回紹介した2冊の本に加え、人類学者、精神病医、歴史社会学者、心理学者が書いた本が3冊課題として出されました。Why Did They Kill? Cambodia in the Shadow of Genocideという本では、人類学者のアレクサンダー・ ヒントンはカンボジアの民主カンプチア政権における粛清殺人に焦点を置き、なぜ人々は殺すのかについて説明しています。 精神病医の Willard Gaylinが書いたHatred: The Psychological Descent into ViolenceでGaylinは人々の個人的情熱がどのようにして暴力や憎しみに繋がるのかを話しています。歴史社会学者のDaniel Chirot及び心理学者のClark McCauleyが書いた Why Not Kill Them All? The Logic and Prevention of Mass Political Murderという本では歴史上行われた大量殺人の例を用いて、そのような行為を行ったリーダーの心理状態を分析しています。この授業は毎週水曜日の夜7時から10時まで行われます。授業の1週間前に教授が課題の本のanalytica gear、(書籍で用いられている理論)をメールで送ります。生徒は教授が送ったanalytical gearを念頭に置き、1週間の間を通して本を読みます。水曜日の授業の前半ではanalytical gearについて皆で討論し、授業の後半ではそれぞれの本を2人の生徒が担当し、本のコンセプトに沿った実例を発表します。来週の授業では、教授が会議に参加するため、授業はキャンセルになり、新しい本を読みレポートを書く課題が出されました。
Willard Gaylinが書いたHatred: The Psychological Descent into Violence という本の表紙で
す。見た目から分かる通り、如何にもシビアで暗そうな本です。
Indigenous people of the Arcticでは教授の講義に加え、グループプレゼンテーションがあります。先週、私はカナダのコロネーション湾付近に住む 先住民の コッパー イヌイットについて発表しました。銅を使う独特な伝統からコッパー イヌイットと名付けられたそうです。
1800、1900年代にヨーロッパの探検家が幾度もコッパーイヌイットの銅を商業化しようと試みました。が、彼らは極寒の気候で飢餓に襲われたり船が氷にはまり戻れないなどの困難な状況に合いました。そのため、コッパーイヌイットはつい最近までヨーロッパの影響を受けずに過ごしていました。次回のプレゼンテーションではコッパーイヌイットの近年の生活習慣の変化について行われます。
Museum Anthropologyでは コロニアル・ウィリアムズバーグという歴史博物館についての本を読み討論しました。コロニアル・ウィリアムズバーグではアメリカの歴史について学ぶだけではなく、その時代に戻ったかのような体験をできることで有名です。アメリカの歴史を学ぶ時にしばしば問題視される奴隷制度を如何にコロニアル・ウィリアムズバーグで展示するかについて議論がなされました。例えば、コロニアル・ウィリアムズバーグでは以前、奴隷オークションの劇があったそうですが、内容が物議を醸し中止となってしまいました。人種差別や奴隷制度を如何に展示するかについて考えました。
*学業面
今学期はConfronting Global Hatred、Indigenous people of the Arctic、Museum Anthropology、統計学、Senior Seminarの5つの授業を取っています。
Confronting Global Hatred(直訳は世界の憎しみに立ち向かう)という授業を取っています。
これは国際関係学専攻の4年生が履修し最終論文を書く授業です。歴史上そして現代社会において極悪非道な犯罪を行った人々(ヒットラーやスターリンなど)がなぜそのような行動をしたのかについて研究しています。まず、その犯罪者の心理状態を読み解き、歴史、文化、政治、社会などの要因も考慮して状況を理解します。そして、将来どのようにして憎しみを防ぐかについて考えます。学期の前半では1週間で1冊の本を読み、その本担当の生徒がケーススタディーを紹介し皆で討論します。(学期の後半は最終論文に向けて研究を行う予定です。)例えば、私が担当した本はスタンフォード監獄実験を行った心理学者のジンバルドー教授が書いた「ルシファー・エフェクト」でした。その本は普通の人々が特殊な地位や状況に置かれたらどう変化して行くかが書かれています。ジンバルドー教授自身が行った実験とアメリカ兵士がイラク戦争のアブグレイブ刑務所で行った罪が例として取り上げられています。
私自身は、ルシファー・エフェクトを踏まえて、「飢えたライオン」という映画をケーススタディとして使いました。「飢えたライオン」ではひとみという普通の高校生が嘘の噂に巻き込まれいじめの標的となる話です。ひとみの周りの人々の行動がどう彼女を追い詰める原因になったかをジンバルドー教授の書籍中の説明を用いて解明しました。
Indigenous people of the Arcticという授業では北極の先住民族についた学んでいます。今週の授業では、人類が始めて北極に辿り着き北極の厳しい状況にどう対応したかについて学びました。旧石器時代の刃物、石器、動物の骨などの化石の解釈の仕方も学んでいます。普段のリーディングに加え、2週間ごとにグループプレゼンテーション及びプラスアルファのリーディングの要約が課題として出されます。
Museum Anthropology(直訳は博物館に関する人類学)という授業では博物館の根本に疑問を投げ掛けています。博物館では西洋世界に占有された価値観が蔓延り、権力者が人々に何を教育していかによって博物館内の展示物が変わってきます。授業以外でも、ミネソタ大学の博物館をクラスで訪ね、戦争、人種差別、女性差別反対などを題材にしたポスター展示館を見学しました。グループワークとしてシューベルト博物館で働く人をインタビューし論文を書く予定です。
展示されていたポスターの一例です。上記のポスターには"From Books to Bombs: The cost of one month bombing in Cambodia will operate libraries from one year"と書かれています。
カンボジアで使われた1か月分の爆弾は図書館一年分の経営費に当てられるというメッセージです。下記のポスターには"We're the best! We're #1! We can kill anyone"とアメリカ第一主義に疑問を投げ掛ける内容となっています。
さて、もう少し何をしているのか詳しく話すと、PubMed、EULAR (European League Against Rheumatism)、ACR (American College of Rheumatology)などのサーチエンジンからリウマチ患者に貢献できる携帯のアプリケーションに関する文献と患者さんのデータをより早く多く集める研究目的で書かれた文献を集めました。EULARとはリウマチ患者を助ける目的で公衆衛生のプロや研究者から成り立つヨーロッパの非営利組織です。ACRはアメリカに位置する同様の組織です。しかし、2つのデータベースとも論文が全文載ってるわけではなく、論文の要約しか掲載されていないので、論文の要約をデータとしてまとめました。
現在のところ、研究者の間では、果たして携帯のアプリが患者及び研究の役に立つかどうか科学的証拠が少な過ぎて結論を出すことはできないのですが、私が集めた文献を見る限りではポジティブな結果が出ている場合が多いです。ただし、現状ではiTunesやGoogle Playなどで、誰がどのような内容のアプリでも掲載することができるので、科学的証拠に基づいていないアプリもあり、患者の害になることもあります。更に、プログラミングの環境がそれぞれのアプリで異なるので、アプリの評価が難しいのも課題です。なので、どのようなアプリが売られて良いかどうかWHO、EULAR (European League Against Rheumatism) 、ACR(American College of Rheumatology)などの機関が制定する必要があります。また、研究者同志でお互いのアプリにアドバイスを出し合うシステムも必要となるでしょう。
Anthropology of Gender and Sexualityの論文では、慰安婦問題をフェミニストの観点から分析する予定です。植民地政策、階級、性差別が慰安婦問題を作り上げたと私はレポートで書いています。戦前の日本における韓国人への差別、慰安婦の多くが韓国の貧しい農村の家庭出身であること、女性に対する性差別の3つの要素が重なり、慰安婦問題を作り上げました。この3つの要素が重なってからこそ、問題を作り上げると論文で書く予定です。この授業では女性差別を歴史、政治、文化の多方面から考える大切さを学びました。
*Panorama Mesdag美術館
Panorama Mesdag 美術館はハーグに位置する スヘフェニンゲン 海岸のパノラマ絵画で有名です。( スヘフェニンゲン 海岸は私が住む寮から 路面電車で30分、自転車で45分ほどかかります。) 絵は Hendrik Willem Mesdagと彼の友達によって描かれました。 19世紀に完成された14メートルの高さの世界最古のパノラマが飾られています。
Panorama Mesdag美術館は洗面所まで絵が貼られていて綺麗です!
*Meermanno博物館
Meermanno博物館は Willem Hendrik Jacob van Westreenen van Tiellandt氏の かつての家です。
Tiellandt氏は彼の犬を溺愛するあまり、博物館の裏庭に犬の立派なお墓が作られています。
Meermanno博物館は かなり古く小さく、夜になると裏庭にはTiellandt氏のお化けが出るという噂です。
*Royal Museums of Fine Arts of Belgium/ 王立美術館
以上で紹介した美術館及び博物館はハーグにありますが、以下の2つの美術館はベルギーのブリュッセルにあります。王立美術館は古典美術館と近代美術館の2部構成となっていて、古典美術は14世紀から19世紀までを展示しています。ファン・デル・ウェイデン、ルーベンス、ヨルダーンス、ブリューゲル、ルーベンス、アンソール、デルヴォー、マグリットなどの絵画が飾られています。
Theories and Concepts of International Relationsという授業では、ディベート、エッセイ、プレゼンテーションを終わらせました。1ブロックの間4つのエッセイを書く予定だったのですが、エッセイを書くたびに教授から非常に細かいコメント及びアドバイスをいただけました。そのため、エッセイを書くたびに書く能力が向上しているのを実感しました。最終授業では、今学期の授業を振り返り、今後の授業を向上させるため、生徒が教授にアドバイスをするユニークな形式でした。
ライデン大学のメインキャンパスはライデン市にありますが、私が勉強する予定のLeiden College University (LUC)はハーグに位置しています。オリエンテーションはライデン市で行われました。私と同じように半年間交換留学を行なっている生徒と同じオリエンテーショングループでライデンを歩き回りイベントに行きました。オリエンテーション期間中はオーストラリアとローマニア出身のガイドがつきライデンのあれこれについて説明してもらいました。アメリカ、スイス、シンガポール、ドイツ、ブラジルなど様々な国からLUCの交換留学生は来ています。オリエンテーションが終わった後も、グループの皆で映画に行ったりブリュッセルに旅行しに行ったり楽しく過ごしています。
*学業面
LUCはブロックシステムを使っているので、私が留学する間はブロック3とブロック4の授業を受ける予定です。今学期、ブロック3では私は EU & Neighbourhood、International Economic Relations、Theories and Concepts of International Relationsを取る予定です。 ブロック4では Non-Communicable Diseases、Anthropology of Gender and Sexuality、Human Traffickingという授業を取る予定です。
国際政治経済学の授業では世界で起きる経済活動を理論面及び歴史面から学んでいます。現代の世界に蔓延る資本主義の実態とは何なのか、どの国が利益を得てどの国が労働力を搾取されているのか、植民地時代の爪痕は現代の国際経済にも残っているのか、などの質問を授業で紐解いて行きます。これまで、critical political economy、neoclassical political economy、developmentalist political economyという3つの理論を学びました。次の授業で中間試験が行われる予定です。教授は事前に中間試験の質問を公表し、生徒は家で考えクラス内でエッセイを書く形式です。前半の授業で試験が行われ、後半の授業では試験で出されたエッセイの課題について話し合う予定です。
Theories and Concepts of International Relationsという授業では国際関係学の理論を勉強しています。毎週のクラスにエッセイを提出し、2週間に一度クラスの前でディベートを行い、3週間に一度プレゼンテーションを行う課題が山盛りのクラスです。クラスはディスカッション形式で、前半の授業ではクラスメートのディベートを聞きエッセイの議題について討論し、後半の授業ではプレゼンテーションの議題について討論します。例えば、この前のクラスのディベートの議題は以下の通りです。
"The trial of Walt v. Waltz. Structural realist Waltz claims that the anarchical international structure leads states to balance against each other’s power. Walt, however, maintains that a more realistic account is that states tend to balance against threats. Who do you agree with when it comes to constructing a theory of international politics? Explain why."
必修授業
さらに、専攻以外にも、マカレスター大学の必修授業には以下が挙げられます。()内はクラス数を表しています。
● General (Divisional) Distribution
○ Social Sciences (2)
○ Natural Sciences and Mathematics (2)
○ Humanities and Fine Arts (3)
● Internationalism(1)
● United States Identities and Differences(1)
● Quantitative Thinking(3)
● Writing(3)
● Second Language Proficiency(4)
こうしてみると、必修授業が多く感じられるかもしれませんが、授業を少なく取るのは簡単です。例えば、4クラス必要とされている Second Language Proficiency については、高校時代に言語の授業を取っていた生徒は試験を受けることによって、4クラスを1クラスに減らすことができます。さらに、私のような留学は既に英語以外の言語に精通しているので、言語の授業を取る必要がありません。
具体的に私の場合は、国際関係学専攻のためには15クラス、神経科学専攻のために15クラス取る必要があります。ただ、cross listされているクラスを必修クラスにすることもできます。例えば、私が先学期取っていたPhilosophy of Mind(神経哲学)のクラスは神経科学専攻の必修授業でもありましたし、 Humanities and Fine Artsのクラスでもありました。
近況報告
それでは最近何をしていたかを書いていきたいと思います!
文化人類学
文化人類学では、今学期を通して、Tibetan Diary、Zenana、The Land of Open Gravesという3つの民族誌を読む予定です。Tibetan Diaryは既に読み終わり、クラスでディスカッションが行い感想文を提出しました。つい最近の授業では、Zenanaという本についてディスカションが行われました。Zenanaはイスラーム教の習慣によって決められた女性のみが立ち入ることができる空間です。アメリカ人の女性人類学者Ruthがパキスタンのカラチで住んでいたアパートでの経験に基づき本が書かれました。カラチには様々な人種・宗教・文化の人が集まっています。
異なる人種・宗教・文化のアパートに住む女性たちの日々のやり取りが如何に政治(普通では男性の政治家が仕切る分野)を表しているか、彼女たちのやり取りがどう平和に貢献しているのかについて本は書かれています。男性が表舞台に立つ社会において、女性たちは出身の村からは異なる人種・宗教・文化のコミュニティを築くことをしいられます。例えば、Muhajirというインドからパキスタンにやって来たエリート層、イスラーム教の規律に厳しいPunjavi、インドから地理的に近いためヒンドゥー教の習慣も取り入れるSindiなどが挙げられます。異なる人種の女性たちが子供と夫の面倒を見ながら、独自の協力できるネットワークを作り、その中で起こる争いと和解の仕方についてクラスで話し合いました。この後の予定としては、感謝祭の休みを通し、The Land of Open Gravesを読むことが課題として出されました。そのあと、ZenanaもしくはThe Land of Open Graves、どちらかの本の感想をエッセイ形式で書く予定です。
それはどうやらインターネットで調べられますよ!
「Macalester Admitted student class profile」 (合格した生徒のプロフィール)と調べると、2021年にマカレスターに入学した生徒の平均テストスコアを見ることができます。ウェブサイトによると、旧SATではリーディングが710点、数学が690点、ライティングが690点、合計で2090点で、新SATではリーディングとライティングで700点、数学が700点、ACTが32点だそうです。ただ、この点数はあくまでも平均であってそれ以上の人もそれ以下の人もいることを忘れないでください。
Q3. マカレスターの奨学金状況について教えてください!
Macalester College Financial Aid and Tuition と調べると、
と表示されるので、一番上のFinancial Aid & Tuition - Admissions & Financial Aid -Macalester… というサイトをクリックします。
大事な情報だけを切り取ると、マカレスターの奨学金のタイプはFinancial Aid AwardとMeric Scholarshipがあります。Financial Aid Awardは個々人または各家庭の財政状況によってもらえる奨学金でMeric Scholarshipが財政状況によらず、その人の才能によってもらえる奨学金です。Financial Aid Awardはアメリカ人だけの統計だと、70%の人が平均47,908ドルいただいてるみたいです。Net Price Calculatorでは自分でどれくらいの奨学金がもらえるか計算できるみたいですよ。Meric Scholarshipは芸術や音楽など、その人特有のアピールポイントがある場合応募できます。統計によると。50パーセント以上のアメリカ人生徒はもらってるようです。どちらのタイプの奨学金ももらう生徒もいます。
ただ、私達のような留学生にとって奨学金状況は変わってくるので、一番確実な方法は大学に直接聞いてみるべきだと思います。私の個人的な印象だと、留学生でも奨学金をもらってる人はアメリカ人に劣らないくらい多いです。
“THIS MATTERS: Sexual Assault Prevention and Alcohol Use at Mac”から抜粋。マカレスターは新入生にアルコール、ドラッグ、性的暴行に関するオンラインコースを受けることを義務付けています。大学内にも、安全の意識を高めるポスターが貼られていたり、寮のホールミーティングで必ず話題に登ります。
*学問面
1. マカレスターのウェブサイト上に教授と生徒の比が10:1、平均のクラスサイズが17人とあり、意外と多いと思いました。実際、教授との関係はどうですか?
確かに平均クラスサイズは多く見えるかもしれません。1年生時に受ける入門レベルのクラス(例えば、Introduction to Computer Science、General Chemistry、Principles of Economicsなど)では生徒数が多くなりがちです。ただ、入門レベルのクラスでも、多くのケアを必要とする1年生のクラスだからこそ、教授も気を配って配慮してくださることが多いです。オフィスアワーの設定を通常のクラスよりも多くしたり生徒が質問しやすいような雰囲気を作るなどなど。さらに、1年生が必ず取らなければいけないFirst Year Courseは生徒数に限りがあり、通常10人以下で行われます。
General Chemistry、化学の入門授業の補習の様子。1年生が大半を占めるGeneral Chemistryでは試験前になると、希望生徒対象に教授による補習が行われます。試験前やレポート提出前になると、オフィスアワーが増やされるなどの工夫もされています。
教授との関係は、その教授によるので一概には言えませんが、基本的にすごく良いと思いますよ。(笑) オフィスアワーに盛んに行って質問をすればさらに良くなるかもしれません。私が先学期に受けたPhilosophy of Mindでは、ペーパーを書くごとにクラス全員に教授から詳しいコメントが送られました。学期末には、教授がクラス全員を彼女の家に招き朝ごはんを食べながら話し合う授業?も行われました。
Philosophy of Mind、神経哲学の授業で書いたペーパーに送られた教授からのコメント。1つ目、2つ目とポイントが分けられていて、次ペーパーを提出する際にどうすれば良いのかすぐわかりました。
試験準備期間中、図書館では予告なしにドーナツやコーヒーが配られていることがあります。さらに、図書館だけでなくCampus Centerという食堂がある学校の中心部でも、突然食べ物が配れていることがあります。配れられる食べ物は甘いもの(パンやドーナツ)とコーヒーという組み合わせが多いです。さらに、Health and Wellness Centerという大学の保健室のような場所ではストレスが多い学生を気遣いお昼時にアイスクリームを配っています。生徒の健康を気遣うはずがアイスクリームを配っているとは矛盾です。
という微妙な気持ちに陥ってしまいました。アメリカに来て間もなく周りの環境に慣れていない中、友人が活発に発言しているのを尻目に授業中一言も発せず悲しかったことを覚えています。さらに、その授業はFYC (First Year Course)という1年生にとって最も大切な授業だったので、FYC が上手くいってないということでさらに落ち込んでいました。中間試験がボロボロでオフィスアワーに行き教授は親切にアドバイスをしてくださいましたが、成績が上がらず、授業自体が嫌いになってしまいました。
私は去年の7月から9月の夏休みの間、2つの非営利組織で働いていました。1つ目の組織がコンゴ民主主義共和国を教育面及び衛生面からサポートしているMwendo Congoで2つ目がアフリカや中東でレイプや戦争の犠牲者となった人々を助けようと1985年に設立されたCenter for Victims of Tortureです。それでは、それぞれの組織を順番に紹介していきたいと思います。
Center for Victims of Torture
Center for Victims of Tortureはアフリカや中東でレイプや戦争の犠牲者となった人々を助けようと1985年に設立されたNPOです。ワシントン、ヨルダン、ケニアなど世界各地にオフィスを持ち、正規社員数は3000人を超えます。アメリカでの社会活動やボランティア活動は社会的に認知度が高く、慈善活動というよりも企業のように振る舞うNPOもあることを学びました。
私は翻訳、寄付者のデータの管理、病院訪問などを行っていました。Center for Victims of Tortureは世界各地のNPOやNGOの人権問題に対処する過程や戦争犠牲者のカウンセリングを綴ったレポートを集め、ウェブサイトに掲載しています。私はそれらの英語のレポートを日本語に翻訳する仕事を行っています。英語の他にも、中国語・アラビア語・フランス語などでレポートを読むことができるので、そのリストにいち早く日本語を加えるのが目標です。
Center for Victims of Tortureでブログを書かせていただきました。翻訳の大変さを親へ当てた手紙形式で伝えました。
アメリカのオフィスの中では比較的フォーマルな雰囲気を持つことでCenter for Victims of Tortureは有名です。オピリッとした雰囲気の中、社員はミーティングやレポート作成に常に忙しそうで、集中力を保つためにフィスでのおしゃべりは咎められています。それでも、カラフルなキッチン、昼寝部屋、おしゃべり部屋など社員が快適に過ごせる環境が提供されています。ドレスコードはありますが、ある程度カジュアルな服装でも構わないようです。
両社の比較
Mwendo Congoは小規模NPOであるため、Center for Victims of Tortureと比べて個人の仕事が組織全体に及ぼす影響力が強いことを感じました。Mwendo Congoでは組織への貢献の度合が大きく、個人の意見が組織全体の決定に反映されやすく、仕事に満足感が得られるのが利点として挙げられます。一方、Center for Victims of Tortureではグローバルな仕事ができ、仕事上のマナーや職場独特の雰囲気を味わうことができます。
World Savvy
学期の終わりに近づき、どの科目でも試験や論文の課題が出されました。貧困・健康・発展の授業ではある国への貧困削減及び健康促進の解決案を国際連合の決議案の形で書く課題が出ました。神経哲学の授業はこれまでの授業を振り返り20ページの論文を提出するのが最終プロジェクトです。私は実験哲学を使い性格の変化が人格の同一性にもたらす影響について書きました。化学の授業では期末試験が行われる予定です。
ミネアポリスで行われた女性のマーチに行った時に見たプラガード。電車が混みすぎてマーチ参加者が1時間近くも待ってから乗車するケースが多発しました。始めてソマリア系女性としてミネソタ州議会議員に当選したイルハン・オマール氏やラテン系州議会議員など人種的少数派の人々がスピーチをしていました。この写真ではカルト集団が掲げていたHomo Sex Is Sin がHomo Sex Is Funに塗り替えられています。個人的には傑作だと思いました。ただ、大学内では周りの友達も含め皆リベラルな政治思考を持つ人が多く意見が偏っています。(たまに暑苦しいです。)
4.立地
学外でボランティア活動に専念するライブズコミットメントプログラムやマカレスター大学はアメリカ中西部のミネソタ州のセントポールに位置しています。州都のミネアポリスとその隣市のセントポールは州で最も栄えていて2つ合わせてツインシティと呼ばれています。そのため、他のリベラルアーツ大学に比べて交通の便が良くインターンシップなどが行いやすいという利点があります。日本と異なりアメリカで就職する場合はこれまでインターンシップなどを通してどのような社会経験を積んだかが問われます。実際、私も去年の夏休み中にツインシティにあるMwendo Congo及びCenter for Victims of TortureというNPO(非営利組織)で働いていました。Mwendo Congoはコンゴ民主主義共和国を教育面及び衛生面からサポートしているNPOです。そこで、私はニュースレターの作成、ウェブサイトの更新、寄付者のデータの管理、コンサートイベントの企画の手伝いを行いました。一方、Center for Victims of Tortureはアフリカや中東でレイプや戦争の犠牲者となった人々を助けようと1985年に設立されたNPOです。ワシントン、ヨルダン、ケニアなど世界各地にオフィスを持ち、正規社員数は3000人を超えます。私は翻訳、寄付者のデータの管理、病院訪問などを行っていました。夏休みの間は大学が閉まっていたので、ホストファミリーの家に居候させてもらいました。インターンシップもホストマザーの繋がりで紹介していただいたので感謝しきれません。ホストフマミリーは入学前、大学が留学生一人一人に手配します。仲の良さは人によると思いますが、私はとっても仲が良いです。(誇らしげ)このように、都市部に位置する数少ない大学としてマカレスターは非常に魅力的です。ミネソタ人は道路を横切ろうとしても車が待ってくれたり、通りすがると微笑んで挨拶してくれたり人がとても良いです。また、市のイベントが沢山行われているので、週末はダウンタウンでブロードウェイのショー(そうです。ブロードウェイもあるんです。)・絵画展・映画を見に出掛けたり、アメリカ最大のショッピングセンターであるモールオブアメリカに買い物に行くことができます。
World Savvy
また、授業に加えWorld SavvyというNPOでインターンシップを行っています。World Savvyはニューヨーク、サンフランシスコ、ミネアポリスの高校生に国際関係学に近い内容の教育を行っています。私はそこの研究インターンとして全国の教育NPOについて調べたり授業内容を深める予定です。職場は学校から電車で1時間も離れた所にあるので、そんな遠くに通いたくないとわがままを言ったところ、学校で働き週一度電話ミーティングをし月一回で職場ミーティングを行うのが許されました。校内では学ぶのが難しい実際に社会に出て貴重な社会体験を得たいと思い始めました。夏休みインターンシップを行っていてても感じましたが、教室内で座って勉強するのと職場に出て仕事をするのはどちらも貴重な体験です。一週間に12時間以上働くと1クラスとして数えられるので、国際関係学の授業として登録しました。