【コラム】驚くべき日米の大学収支の違い(その2)

皆さん、こんにちは。アゴス・ジャパンの佐々木です。

前回は、日米の大学収支の違いと称し、収入面についてのお話(https://www.agos.co.jp/blog/news/2016/06/14/column/)をしました。

前回のコラムから、米国の大学の収入規模の大きさが皆さんにもご理解いただけたかと思いますが、それだけの収入を得ながら、それが一体どのような用途で使われるのでしょうか。実はここにも興味深い日米の差が存在しています。

米国の大学において、支出の中で圧倒的な割合を占めるのが実は教授陣の給与となっています。スタンフォード大学の場合(*1)、全体の支出のうち給与が占める割合が59%、運営経費が31%ですので、いかに給与の割合が大きいかがわかります。

The Chronicle of Higher Educationが毎年発表している大学教授の平均年収(*2)のデータを見ると州立大学(4年制)で111,053米ドル、私立大学(4年制)で119,105米ドルとなっています。

日本の場合、国立大学法人(86大学)に限っての資料となりますが、大学教授の平均年収は、平均1005.8万円(*3)ですので、この数字を見る限りは、日米の差はさほど感じられません。

ただ、年収ランキング上位大学の金額を日米で比較すると、その差は明白です。
アメリカの大学における平均年収第1位はStanford Universityで220,338米ドル、第2位がUniversity of Chicagoで215,262米ドル、第3位がHarvard Universityで214,857米ドル(*2)となっており、上位校の教授は平均して実に2,000万円以上の年収を得ていることがわかります。ちなみに全体を見ると、年収ではなく通常の大学ランキングの上位校で、優れた大学院を持つ大学の教授の給与は高い傾向にあり、逆に大学院を持たない例えば4年制のリベラルアーツカレッジなどでは低い傾向となっています。

一方、日本の国立大学における第1位は東京医科歯科大学の1183.1万円、第2位が東京大学の1159.4万円(*3)となっています。数年前に、京都大学の某教授が個人ブログ(*4)で年収を明らかにしたことで話題になりましたが、同記事によるとその金額が約940万円(基本給660万円+賞与279万円)であったとのこと。世間では、天下の京都大学の教授でもその程度なのか、ということでちょっとした騒ぎになりましたが、国立大学においては基本的にそれほど大きな差はありません。

日本の私立大学では、残念ながら国立大学のような公的な資料が存在していませんので、あくまで参考数値ですが、平均年収.JPのデータによると、45歳教授の場合、第1位が早稲田大学で12,767,900円、第2位が中央大学で12,763,790円、第3位が明治大学で12,652,517円となっています。

参考数字ですので厳密な比較はできませんが、それでも米国大学との規模の違いは見えてくると思います。また、今回ご説明しているのはあくまで平均年収ですので、もちろん個人によって年収はピンキリです。テニュアと呼ばれる終身雇用資格を持っているかどうかでも大きく変わってきますが、有名人気教授となると1億円プレイヤーも少なからず存在します。

そのクラスの優秀な教授となると、高額のサラリーで他大学からスカウトされることも珍しくありません。まさにプロスポーツ選手が高額な契約金で移籍していく状況と変わりありません。そして、優秀な選手が来ると一気にチームが強くなるのと同様に、優秀な教授を得た大学のプログラムの質は確実に上がります。その結果として多くの優秀な学生を輩出されることとなり、最終的に大学の価値を高めることにつながっていくことになるわけです。ちなみに、スタンフォード大は1891年創立ですのでまだ125年と他の名門大学に比べると非常に歴史の浅い大学です。ただ、ここまでの地位に登りつめることができたのは、ノーベル賞を受賞したような優秀な教授陣を多額の資金を使って招き入れたから・・・と言っても過言ではありません。

まさに米国の大学は、かけるべきところに費用をかけて、大学の価値を高めることに徹底して取り組んでいると言えるでしょう。

*1 Stanford Facts 2015(http://facts.stanford.edu/administration/finances)より
*2 THE CHRONICLE OF HIGHER EDUCATIONのCHRONICLE DATAより
*3 「文部科学省所管独立行政法人、国立大学法人等及び特殊法人の役員の報酬等及び職員の給与の水準(平成27年度)」より
*4 http://kanakotakayama.blog.eonet.jp/default/2014/07/post-c783.html