卒業生が語る「国際関係学大学院留学の意義と価値」

去る2月22日(金)、卒業生が語る「国際関係学大学院留学の意義と価値」と題したイベントを開催いたしました。当日は、当校コンサルタントによるレクチャーでスタートしました。

レクチャーは当校コンサルタントである岡田が担当し、国際関係学という学問分野の説明、大学院合格までのロードマップの解説を行いました。要点としては下記の3点になります。
(1)準備項目は幅広いです。(TOEFL(R)TEST対策、GRE(R)TEST対策、願書作成、推薦状の手配、エッセイ執筆等)
(2)出願のために使える時間は限られています。合格者統計によると1000時間(テスト準備に750時間、書類準備に250時間)です。
(3)出願締め切りから逆算して準備をスタートしてください。


次にメインゲストである山岸 尚之氏(ボストン大学にて国際環境学を専攻)のパネルディスカッションが、当校コンサルタントの岡田のファシリテイトの下、Q&A;形式で始まりました。

山岸氏は現在、パンダのマークの自然保護団体であるWWFジャパンという環境NGOにて 気候変動環境オフィサーとして勤務されています。50カ国にオフィスがあり、 100カ国で活動している団体です。主に、野生動物の保護や地球温暖化防止策に取り組まれています。気候変動環境オフィサーとしての仕事とは、環境問題について企業、各団体に対してのロビー活動、政府に対しての環境政策提言など多岐に渡り、日々グローバルな環境の中でお仕事をされています。

◆国際関係学に興味をもったキッカケ
当時、京都にある立命館大学にて国際関係学を専攻していました。 なぜ大学で国際関係学を専攻されたかというと、将来国際的な仕事がしたかったこと、 英語が得意だったことが理由です。

◆大学院留学を決意したキッカケ 
1997年に立命館に入学して、京都では京都議定書が採択されるという 歴史的な瞬間を体験することが出来ました。大学では、国際政治を専攻していたのですが、その中でも環境問題に興味を持ち、議定書についてレポートを書いたりしているうちに、国際政治の中でも環境政策に興味を持ち、もっと勉強したいと思いました。 ですが当時、日本ではまだ「国際政治学」というとメインはテロ対策や安全保障でした。「環境政治」をテーマにしているものは無かったので、「環境政治学」が発達しているアメリカに留学することを決めました。

◆留学の時期について
大学3年生の秋に進路説明会があり、その時から就職ではなく大学院留学を決意していました。

◆決断~合格まで
あまり、準備に苦労はなかったです。なぜなら、就職活動も一切しなかったので、 大学4年生は留学準備と卒論のみに時間をさけました。

◆なぜボストン大学? 
実は8つの大学院を受験し、ボストン大学、シラキュース大学、デンバー大学、ノースキャロライナ大学に合格しました。その中で、ボストン大学とシラキュース大学で迷いましたが、ボストンは東部の中心とも呼ばれている都会であること、歴史のある街であることなどから、ボストン大学を選択しました。他の場所は分かりませんが、実際ボストンに留学する中で、多くの人種、言葉が飛び交う中でアメリカの文化を吸収できたことはとてもよかったと感じています。

◆プログラム選定の仕方 
まず、やりたい分野がはっきりしていたので、国際関係学の中のConcentrationにEnvironment系がある学校をリストアップしたところ、20校ぐらいに絞れました。 その後、入学したらどのようにカリキュラムを選択していけるかを、学校のWEBサイトのシラバスを見ながら、シミュレーションしてみたところ、思ったようにカリキュラム選択できない学校もいくつかありましたし、研究者がFaculty Room Memberにいてアドバイザーをしているかどうかなど調べたところ、8校まで絞れました。 なかなか、大変な作業ではありましたが、その後の2年間を有意義にするためには学校選択するためのリサーチは大事なことだと思います。

◆国際関係学という専攻 
国際関係学とは、学問の性質上、多岐に渡る学際的なアプローチが可能です。つまり、International Relationsは「色々な分野のつまみ食い」と言われています。ともすると国際関係学を専攻した後の自分に核となるものが無いということが起こり得ます。 国際関係学を大学院で専攻しようと考えている方が、どのようなことに気をつければ良いのかというと、「自分の軸をもつ」ことが大事。 自分の軸を「経済学」においたら、それを起点に必要なものを学際的に学ぶというように、 一番、どういった分野に興味があるのか、自分はここが強いといえるようになることが大切です。 特に、今までの専攻やキャリアを今回の大学院留学によって方向性を変えたいと考えている方には重要だと思います。

◆留学生活
まず、何はともあれ、自分の「英語力」にショックを受けました。 入学前に語学学校に少し通ったのですが、そこでも他の国の人達に比べ、 全然しゃべれない自分がいました。 コンビニに行っても、"need a bag?"が「ニダバ?」と聞こえ、何のことかわからず、、 ともあれ、最初のセメスターは本当に大変でした。 1タームに3~4クラスとるのが限界なのですが、単位をとるだけで精一杯で、特に大変だったのは「Reading」と「発音」。。 毎日は「学校」「図書館」「家」のトライアングルでした。 どのように授業を乗り切ったかについては、常にもう一息予習をするという姿勢です。このくらいでいいやと思わずに、もう一歩知りたいと思って準備をすることが、自分なりの方法でした。しかしながら、最初から留学生活をボランティアや私生活、キャリアなど、色々な活動をする人もいるので、どこまで何を極めたいかで留学生活の送り方が変わるのではないでしょうか。

◆留学を目指す方へのアドバイス
英語については、「しゃべらなければ、しゃべれるようにならない」ということ。 TOEFL(R)TESTやGRE(R)TESTはあくまでテスト。生の英語とは違うことを理解してください。 とにかく、しゃべれるようになるには、しゃべれる機会を増やすこと。 そのために、「プライドは捨てる」「恥をあえてかく」ことが大事だと思います。 ネイティブの方は、コミュニケーションをとろうとする人には寛容なので、 こちらが言いたいことを待ってくれます。 そうすると、意外と通じることがわかり、友達が出来始めます。 ここからが大事なのですが、ある程度しゃべれるようになったら、 キチンとしゃべれるようになる!ここまで出来る方はあまりいませんが、英語については 常に学ぶという姿勢が大切です。

◆授業を受けての感想
一番おもしろかったことは、アメリカでは学生同士で授業中に議論します。 教授がそこにチャチャを入れ、また議論が白熱することは日常茶飯事。 日本では体験できないことだなと思いました。 また、「いかに授業に貢献できるか」という意味で努力したことは、 予習を人一倍することと、発言することは苦手だったので、ウェブに授業の感想を書いたりして、存在感を出す努力をしました。 アジア人は発言が苦手であることは、アメリカの教授は理解している場合が多いので、 発言意外の形での貢献を考えることをお勧めします。

◆インターン
インターンを実施しませんでしたが、実際、インターンを考えている人は留学が決まった時期から、 どういったインターンをどこでするのか決めておいたほうが良いでしょう。 思ったより時間がかかります。早い方だと入学後1-2ヵ月後にインターンに向けての活動を開始します。山岸氏の場合は、夏休み期間は、授業期間にやりきれなかった研究を深めたり、リラックスする時間に使っていました。

◆就職活動 
ボストンでは、毎年秋にボストンキャリアフォーラムが開催されていて、そこで勝負をかける学生も多い中、かなり適当に参加してみました。そこで、印象的だった出来事はゴールドマンサックスの方から、「あなたの学問歴で、なぜ、うちなの?」と言われ、「それもそうだなぁ」と目が覚めました。 そこで、真剣に自分のキャリアについて考えてみたところ、気付いたのはNGOか研究機関かなということ。 以前から、研究のためにWWFのメールマガジンを読んでいたので、そこにポストされていた求人案内にすぐに反応しました。用件がすごいとはいえ、150%のアピールで内定をもらえました。 評価されたポイントは、「特殊な勉強をしていたこと(京都議定書における国際環境政策)」、この分野で求められるスキルを取得していたこと」でした。NGOでは非常に特殊なスキルが求められます。自分の専門性(軸)を持っていたことが評価されたのだと思います。
国際関係学を専攻された方の就職先で一番多いのはコンサルティング系、 行政関係に行かれるかたもいらっしゃいますが、NGOは山岸氏ぐらいだったとのこと。 アドバイスとしては、「自分の売り」を見極めること。今無い人は、大学院の2年間の間につくることをお勧めします。

◆留学準備のプロセス 
推薦状が一番計画的だった部分です。担当教授に早めに声をかけ、 英語の教授で、自分を気に入ってくれていた方にお願いしました。ただし3通必要でしたから、戦略的に自分の興味のある客員教授の授業を積極的に取り、計画的に自己アピールし、書いてもらいました。客員教授の授業は大学3年から取っていました。 推薦状に関しては、早めに何をアピールしたいのかを決めるべき。 また、英語書けない方に頼む場合は、翻訳会社に依頼するなどで問題はないです。 一番重要なのは"Credibility"=信頼性です。 エッセイに関しては、ウェブや本にStatement Purposeにはこう書くというのが 載ってるので、それを参考に「何をやった」「何をやりたい」「将来、こう活かしたい」というのを書きました。 留学のきっかけとなった、京都議定書で国際政治と環境政策に興味を持った経緯、どのように研究を続けてきたか、そして将来こう活かしたいという流れで書きました。

◆エッセイで描く、将来こうなりたいというキャリア設定について
キャリアをすぐに決めるのは大変難しいと思います。 過去、現在、未来とあって、現在は過去の自分が作り上げ、未来は現在の自分が作り上げるという意識が大切。大学院側が、エッセイ課題として卒業後のキャリアを聞くのは、「現在→未来を描ける力」があるかどうかを判断しているのです。

◆アメリカの大学院留学の意義
ボストン大学は、色々な国の人が集まるところで、「多様性」と「コミュニケーション」を 最も学んだと思います。現在、各国のオフィサーと話をし、ストレスフルかつエキサイティングな毎日を過ごしている中で、留学したからこそ、この多様性とのコミュニケーションを楽しんでいる自分がいると思います。

◆みなさんへメッセージ
留学の意義という意味で、「留学するかしないか」を準備過程の中で、 迷いました。しかしながら、今言えることは、迷った時はやるべし。なぜなら、留学に価値があったかどうかを決めるのは留学後の自分であり、留学生活をどう送るかも自分が決めることだからです。

山岸氏の明快且つ心のこもったご回答に、この場を借りてお礼申し上げます。本当にありがとうございました。 以上、卒業生が語る「国際関係学大学院留学の意義と価値」のレポートでした。 開催にご協力いただいた皆様、ご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました。


山岸 尚之 (やまぎし なおゆき)氏
学校名/卒業年度:Boston University, MA in International Relations and Environmental Policy, Class of 2003
勤務先:WWFジャパン(財団法人 世界自然保護基金ジャパン)
役職:自然保護室 気候変動プログラムリーダー

<略歴>
1997年に立命館大学国際関係学部入学。
同年に国連気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)が(同大学キャンパスがある)京都にて開催され、 京都議定書が採択されたことがきっかけで気候変動問題をめぐる国際政治に関心を持つようになる。 2001年3月に同大学を卒業。9月より米マサチューセッツ州、ボストン大学大学院にて、国際関係論・環境政策の修士プログラムに入学。
2003年5月に同修士号(MA in International Relations and Environmental Policy)を取得。 卒業後、WWFジャパンの気候変動担当オフィサーとして、国内の温暖化防止政策提言・キャンペーン活動に携わるほか、 企業とのパートナーシップ・プログラム、国連会議での情報収集・ロビー活動などを担当。2007年より気候変動プログラムリーダー。

<著作>
山岸尚之(2002)「地球環境問題解決のための国際協調」(第5章) 池尾靖志/編 『平和学をはじめる』 晃洋書房:147-177
山岸尚之(2007)「アメリカ議会および西部5州の動向」(第10章) 諸富徹・鮎川ゆりか/編 『脱炭素社会と排出量取引』 日本評論社:151-169