国際機関の仕事と留学の意義

去る8月19日、2008年トップスクール合格者とトップスクール卒業生をお招きし、海外大学を目指したきっかけや留学の意義、学校選択プロセスなど、実体験に基づいたプロセスを語っていただきました。体験者だからこそ語れる内容に、参加された方は勇気づけられるセミナーとなりました。

第一部:名門リベラルアーツカレッジ卒業生が語る「海外の大学で学ぶ意義」 パネリスト:和田 敦朗 氏

◆海外の大学進学を目差したきっかけ
~考えぬいて、海外の大学進学を決定~

高校1年の語学研修を通じて、海外に出て初めて気付く日本人としての自分、周りとの価値観の違いにとても興味を持ったのがきっかけです。そして、自分が外に出ることで気付くこの違いこそが、大変だけれど自分を大きく成長させるためには欠かせない。この経験をさらに伸ばすために、「将来海外で学びたい」と考えるようになり、海外の大学を視野に入れました。ですが、この感情だけで「海外の大学に行く」と決めることはできませんでした。高校3年間、この選択が本当に自分にとって最適なのかを何度も何度も考えました。 そして、「行きたい」という気持ちに、「行くべきだ」という考えが加わったことで、留学をする決心がつきました。

①未知の世界と触れ合いたい(好奇心)。
②将来の進路のためには、早い段階(学部)から海外に行ったほうがよい。大学院になってからよりも今行くべき。
③アメリカの大学のシステムのほうが、自分の求めているものに合っている。

②については、その当時、僕は国連などの国際機関で働きたいと考えていました。英語でのディスカッション、ディベートなどのスキルは、大学院に進学する前の学部からコツを磨いておかないと太刀打ちできないと考え、学部から行くべきという結論になりました。

③僕は、当時から博士課程まで学びたいと考えていました。研究者としての基礎力を大学から磨いておきたいと考えており、その際に重視したのは下記でした。

ディスカッション重視であること。僕の求めているのは、多様性の中で新しい考えを発見し、周囲に対して自分の考えを認めてもらうこと。日本の大学では、一部ゼミなどはありますが、どちらかというと大教室で講義を聞くということが主になると思います。少人数制を大切にしている大学に進学したいと思いました。

続いて、多様性のある環境です。アメリカの大学では、留学生を積極的に受け入れ、少人数の大学であっても、各国からの留学生の比率を重視しながらクラスを構成します。自分の知らない考え方をもたらしてくれる環境は、僕には欠かせないものでした。また、多様性は国籍だけとは限りません。アメリカは様々な人種、そして経済的な格差を持った社会から構成されています。大学では、クラス内において人種のミックスに配慮し、高い学費を負担できない学生に対しても奨学金を授与するなど、非常に多様性のあるクラス構成を重視しています。これこそが、僕の求めていた環境で、その中で自分として何ができるかをチャレンジしたいと思いました。  

◆リベラルアーツカレッジの魅力
リベラルアーツカレッジを選んだ理由は下記でした。

少人数制の教育であること
留学生にとって、ディスカッションやライティング力をネイティブ並みに発揮するのは困難が伴うものです。 少人数制教育であれば、語学面のハンディをサポートしてもらいやすいこと、クラスメートや教授とじっくり話し合える環境が整っていることから、リベラルアーツカレッジを選びました。 また、生活についてもリベラルアーツカレッジは全寮制です。クラス以外にも学生とじっくり語り合える環境は魅力的でした。

博士課程の進学率の高さ
大学を調べている際に、リベラルアーツカレッジの博士課程の進学率の高さに気付きました。僕は、当時国連などの国際機関で働くことを目標にしており、博士課程まで進学したいという希望を漠然と持っていました。Swarthmoreに進学を決定した理由としては、僕の希望の社会科学の分野での進学率の高さからです。

奨学金の機会
リベラルアーツカレッジを志望し、情報収集を進めている際に、リベラルアーツへの進学を条件にしているグルー・バンクロフト奨学金に応募し、幸運なことに奨学生に選ばれました。そして、進学先をリベラルアーツカレッジに絞りました。

◆留学生活について

1年目:学業面、とにかく大変だった!でも、教授の親身な指導に感動!

一言でいうと、非常に大変でしたが、充実していました。 まず、初日のクラスで衝撃を受けました。2日で200ページに渡るギリシャ悲劇の内容を読み、レポートを提出するというものでした。この量を読ませるのか?と言葉を失いましたが、とにかくやるしかない!とむちゃくちゃな内容でもレポートを出したのを覚えています。その後も、1週間で1冊は読むというペースが続き、1学期目はこんなところに来てしまった・・というプレッシャーと焦りの日々でした。

ところが、ひどい成績をつけられ、返却されたレポートを見た時に、驚きました。 僕の書いたレポートより教授のコメントの量が多い! そして、どうしたらよいかのアドバイスが詳細に書かれている!そして、直接私のオフィスに来なさいとまでコメントがある!

もしかしたら、こんな親切なのはこの先生だけなのか?とも思いましたが、多くの先生は同じように非常に教育熱心で、親身なアドバイスをしてくれました。 アドバイスどおり、教授のオフィスに向かうと、僕のひどいラィティングに対して、文法ミスから内容のアドバイスまで丁寧に教えていただけました。ここで、レポートの基本を学ぶことができたと思います。教授の親身な指導に感動しました。

2年目:リベラルアーツの醍醐味を知る~複眼的な思考の重要性~

リベラルアーツカレッジでは、一般教養を重視します。一般教養の強化とは、単に特定の学問を学ぶだけではなく、それを通じてより根本的な物の考え方、Critical Thinking(批判力)等の知的能力を養うことを目的としています。専攻に関わらず、自然科学、社会科学、人文科学、など幅広い学問に触れることを大切にしています。

ここで、エピソードを紹介します。
僕は政治学専攻で、2年で油絵を取りました。ある日、油絵の授業で、イスの絵を描く課題が課されました。イスの絵というと多くの人は、正面からイスを描くと思いますが、このクラスの中では、イスを真上から、真下からみたらどう見えるか?そしてなぜ、その書き方をあなたが選んだのか?などを一人ひとりの絵を元に、ディスカッションを行うものでした。

当たり前のことに、新しい考え方をとり入れること。違う角度から見てみること。これにより、「違う考え方をしてほしい、違う分野をみることで物事の本質にさらに気付く」ということを教わり、それは専攻である政治学においても大いに役に立ちました。

3~4年:ゼミに没頭~議論をすることで気付くこと」の重要さ~

3~4年になるというディスカッションが主となります。大体、クラスメートとのディスカッションは夜7時からスタートし、11時までに終わるというのがルールでしたが、時には夜中の1時すぎまで大議論に及ぶこともありました。

ディスカッションで学んだことは、「答えは1つではないということ。自分の意見を主張しながらも、教授やクラスメートの意見を受け入れることの面白さと、そこから生まれる新しい考えの重要性です。

例えば、授業では、こんなことがありました。
スラム街出身の教授の経済学のクラスです。自身のバックグラウンドもあり、「何とかこのスラム街を立て直したい。そのために何をしたらよいのか?」というのがテーマでした。もちろん解決に対して絶対的な答えがあるわけではありません。 しかし、唯一解が存在しない中、あなたはどのような理由でどのような方策を採るべきと考えるか?そしてその考えに対する批判にどう対応するか?を考えることが求められます。 それぞれが意見をぶつけ合うわけですが、お互いの意見には、長所と短所があります。そして、その意見を聞きながら、自分の主張を続けることにより、当初は思いつかなかったような新しい考えが生まれること、もしくは、物事を複眼的に捉えることの重要性に気付くのです。もちろん、分かってもらうためにはどのように伝える必要があるかという訓練も重要ですが。このディスカッションを通じて、自分を知ること、知的訓練が自分の中で大きな収穫となりました。

◆留学生活について

4年間すべてが貴重な財産

少人数制のリベラルアーツカレッジでの学びは、クラスのみではありません。出会った人からも大きな影響を受けました。

クラスメートとの関わり:
リベラルアーツカレッジでは4年間全寮制です。24時間を常にともにする仲間。時間/場所を気にせずいつでも集うことができます。たわいもない話から、深い話まで本当によく話しました。一生付き合いたい多くの友達ができた大学時代でした。ここでは、特に僕に大きな影響を与えた友人を紹介します。

教育学専攻の友人:
彼は、イタリア系アメリカ人でした。両親は高校卒のブルーワーカーです。奨学金をもらいながら多くの学校関係者に助けてもらったというバックグラウンドからか、教育学を専攻していました。大学も奨学金を使って学んでいました。彼は、現在、U of Pennの博士課程に在籍しながら、スラム街の小学校で教えています。学んだことをコニュニティに貢献する。この精神を教えてもらった友達です。

政治学専攻の友人:
彼はパレスチナ出身。パレスチナを救うために、当初は精神科医になりたいという希望をもって大学に入学してきました。他の学生にもパレスチナの事情など多くのことを私たちに教えてくれるような学生でした。ある日政治について話し合っていた際に「パレスチナを救えるのは政治だけなんだ」とつぶやいた言葉は強い力を持ち、僕の心に残りました。ちょうどその時、僕は政治学を学ぶ方向性を見失っているときでもあり、なぜ政治が世の中に必要なのかを彼から教えられたと思っています。いつも、僕は道に迷った際に彼の言葉を思い出します。

政治学専攻の友人:
彼女は、韓国とアメリカ人のハーフで韓国で育った経験を持っています。父親が軍隊におり、育った環境のせいか、「アメリカのためにできることをしたい」という思いを持っています。現在は空軍で働いています。在学中からも、彼女は軍服を身にまとい自身の愛国心を主張していました。表現の自由、そして彼女の思いを彼女から感じることができました。

その他、多くのことを気付かせてくれた教授にも深く感謝しています。

◆留学の意義とは
僕にとっての留学の意義は下記につきます。

① 知的訓練の場
大学で学ぶことは、単なる知識ではなく、物事の考え方やその土台となる分析力、批判力(クリティカルシンキング)、表現力である。僕はそれらを、自分より優れている方からの多くのサポートを得、大きく成長させることができたと思います。 すばらしいクラスメートや教授に囲まれ、大きな成長の機会を得ることができました。

② 卒業後の人生の方向付け
大学で出会った、クラスメート、教授から受けた影響は計り知れないほど大きなものです。これは大きく自分の予想を上回りました。本から学ぶこと以上に、周りの人間から学びます。様々なバックグラウンドからきた友人たちは、それぞれの強烈な個性を通じて僕に多くのことを教えてくれました。彼らを見て、彼らと意見交換することでより自分を知り、自分がどのような形で社会に関わって生きたいのか、明確化できたと思っています。

留学で得られるものは人それぞれですが、僕にとっては非常に実り多いものとなりました。もちろん4年間の留学生活は楽しいことばかりではありません。異文化の中に身を投じるのですから、当然勉強面でも生活面でもつらいこと、苦しいことはたくさんあります。しかしそういった経験も、自分を成長させてくれるものだったと今では思います。 これから海外に進学したいという皆さん、ぜひ頑張ってほしいと思います。

-第2部  私の学校選択-
お二人の留学のきっかけ、合格までのプロセスについては、こちらでご確認ください。

総合大学編:パネリスト 天野 友道 氏

学校選択には多大な時間をかけました。そして、結果として、学校選択を通じて、自分が海外の大学に何を求めているのかを考えさせられるプロセスとなりました。調べることが多くあり、大変なこともありますが、ぜひ、楽しんで学校選択を行ってください。

僕の場合の大学の選択基準は下記でした。

① 僕なりのこだわり:家族との話し合いの中で、海外に進学するのであればトップスクールであるという条件があったこと。奨学金が充実していること。
② 学びたいこと:ビジネスやコンピュータ関連に興味があり、それらが学べること。
③ 留学生活について:幅広い経験をしたいので課外活動が活発であること、特にビジネス系のものが充実していること。
④ ランキングについて:先ほどもお伝えしましたが、トップスクールであること。

自分なりのこだわりが見えたら、Wikipediaや学校のサイト、College ConfidentialなどのWEBサイトを活用すると効果的です。

そして、情報収集は調べてわからないことがある場合には、ぜひ、プロアクティブに動いてください。そういった積極性も学校側の審査に影響することもあると思います。例えば、大学には受験生からの質問に答えてくれる部署があります。分からないことがある場合には、直接電話/e-mailなどしてください。実際に僕も10回以上連絡をしました。大学や同窓会、Face Bookなど様々なツールを活用しましたが、時間をかけて集めた情報があるからこそ、Why this school?に答えることができたと思います。

リベラルアーツカレッジ編:パネリスト佐久間 真紀 氏

私の学校選択のプロセスでの工夫は下記です。

① Rankingで学校の概要を掴み、View Book(学校案内)を入手し自分なりのこだわりを整理する
② College Confidential(WEB Site) やOBとコンタクトを取る

まずは、View Bookを入手し概要を掴むようにしました。View Bookには、学校のミッション 生徒の様子 プログラム紹介 生徒のサポート体制などが分かりやすくまとまっています。これらを読んでいると、各学校の違いがなんとなく見えてきました。私の場合、Reed Collegeをリサーチしていた際に、大学院進学率の高さ、またスカラシップの多さなどを見つけ、リベラルアーツカレッジに非常に魅力を覚えました。

また、同じリベラルアーツカレッジでも、Amherst Collegeでは、学校のある場所柄か、Amherst以外の複数のカレッジのコースを組み入れることができるなど、柔軟に授業を組み立てることができるのに対して、Pomona Collegeでは方針として必須科目がきっちりと組まれているなど、違いが見えてきます。このように、View Bookをみていると、Why this college?について漠然ながらも分かるのです。 ですが、それだけでは校風などの詳細な情報は分かりません。日本では、例えば、慶応と早稲田の違いを肌感覚で分かりますが、アメリカの現地の情報は同じようには行きません。その際に、効果的だったのはOBとのコンタクトです。

大学によっては日本でOBとのインタビューが受けられるところがあります。実際に私も日本でインタビューを行ってくれる学校についてはお願いをしましたが、学生の雰囲気を知るのにとてもよい機会となりました。インタビューでは審査されているというよりは、OBの方が学校の良さや雰囲気を伝えようとしてくれていると感じました。 私のインタビューの中で印象的に残った学校は下記です。

・Reed College
   自身の大学時代の体験談を語ってくれ、大学のイメージを掴むことができました。

・Pomona College 
   同じく大学時代の体験談を語ってくれました。とても面白かったのは、寮での話。ルームメートの部屋を新聞紙で一杯にしてしまおう!というアイデアを他のルームメートと実行した話を教えてくれました。今まで雲の上のような遠い存在だった大学生生活が、とても身近に感じられ、そこに自分が居たいとイメージできるようになりました。
  
お二人ともに、学校選択にこだわった部分は異なりますが、共通しているのは「プロアクティブに行動すること」。ぜひ、皆さんなりのこだわりを見つけたら、積極的に動いてみてください。

その後、イベントは、トップスクールの入学審査のプロセス、バンクロフト基金の奨学金制度についてと続きました。

第一部から第三部を通じて、見えてきたことは。
①海外の大学に進む選択肢に興味のある方は、その選択肢を考えぬくこと。
②そのためには自分なりのこだわりを見つけていくこと。
③自分と他人の違いを理解できることが多様性の出発点であることです。
海外の大学という選択肢に興味のある方は、ぜひ自ら動いてこのプロセスを進んでいきましょう。


第一部パネリスト:和田 敦朗 氏(武蔵高校卒業)
Swarthmore College 2006年卒業生 (グルー・バンクロフト基金奨学生) 
現在東京大学大学院在籍中
第二部パネリスト:天野 友道 氏
アゴス・ジャパン特待生 
進学先:Harvard University
第二部パネリスト:佐久間 真紀 氏
アゴス・ジャパン特待生 
進学先:Swarthmore College
グルー・バンクロフト基金奨学金奨学生