国際機関の仕事と留学の意義

去る9月23日に、国際通貨基金(International Monetary Fund)人事部人事オフィサーである富永こずえ氏をお招きし、国際機関で求められる要件について、そして、自身も大学院留学をされている経験から、留学体験談と国際機関で働く意義についてたっぷりと語っていただきました。富永氏は、2006年フルブライト奨学金及びロータリー奨学金を獲得し、ジョージワシントン大学(アメリカ合衆国ワシントンDC)人材開発修士号を2008年に取得されています。

第一部:国際機関で働くために求められる要件について

国際公務員とは?

一言で、国際公務員といっても、①国連(国際連合)本部②国連の下部機関(UNICEFなど)③専門機関(世界銀行、IMF,UNESCOなど)④その他国際機関(OECDなど)のように幅が広く、これらの機関で働く人を総称して「国際公務員」と呼んでいます。

現在の仕事は?

IMF(国際通貨基金)で人事オフィサーの仕事をしています。 IMFはワシントンD.Cに拠点をもつ、主に通貨に関する国際協力の推進、為替の安定、国際収支不均衡是正のための機関で、現在185ヶ国が加盟しています。スタッフ数は 約2500名、世界146カ国から構成されています。その中で日本は世界第2位の出資国でありながら、職員数は非常に少ないのが実情です。IMFの職員のうち、約半数はPhDレベルのエコノミストとしての専門職で働いています。 

国際公務員になるパス

国際公務員になるパスとしては、主なものとして下記があります。

1.30代前半まで
JPO(Junior Professional Officers),YPP, LEAD,EP,NETIなど組織独自の若手採用プログラム
UN Competitive Exam(国連職員採用競争試験)
コンサルタント
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2.ミッドキャリアの場合
コンサルタント
空席広告

1.の中で、JPO制度は最も応募しやすいプログラムの1つです。日本では外務省管轄となります。この選考試験に合格すると原則2年間の任期で、派遣先の取り決めをしている国際機関のP2レベルの職員として派遣されます。任期修了後は、国際機関に正規職員として採用される可能性もあります。

JPO制度の詳細や、JPO以外の各国際機関が独自で行う若手向けの採用プログラムなどもあります。詳細は外務省国際機関人事センターにてご確認ください。 

-国際競争試験

国連に直接応募するプログラムです。最近の数年の間では、日本人の採用者数は非常に少ないのが実情です。 こちらも外務省のWEBサイトに詳細が載っています。

-空席応募

一般の転職活動と全く同じで、各機関の空席に応募するシステムで、私はこちらの制度で応募しました。空席情報は、各期間より随時発表されますので、その情報を探すことから始まります。

下記などで、情報を探すのが効果的です。国際機関人事センターのサイトにはロスター制度というものや、登録しておくと空席情況をメールで知らせてくれるサービスもあります。ですが、空席応募はタイミングとスピードも重要です。自ら情報を各機関に取りにいくという姿勢も重要です。私も毎週多くの機関の情報をチェックしていました。

International Civil Service Commission

国際機関で求められる条件について 高い専門性が求められるプロフェッショナルレベル

国際連合やその他いくつかの機関では、UN Common Systemというものを採用しており、職位レベルに応じた応募条件が設定されています。下記をご覧下さい。(すべての機関でUN Systemが使われているわけではありません。)

その上で、各機関のウェブサイトに掲載されている募集要項をよく研究してください。とても詳細に応募条件が明記されています。どのスペシャリティが必要か、どのようなスキルが求められるかなどを確認することが重要です。

大学院修士課程卒業の場合、ある程度の職歴をつけていただいた上で、多くはP(プロフェッショナル)2レベルからの職位の応募となります。また、職種によっては、国際機関内部での職務経験を求める場合もあります。その場合には、コンサルタント契約、ボランティア、またはインターン経験を経てから希望の職種に応募するというステップを経ることも必要となります。国際機関に最初に就職する際には、正規ポジション以外にも国際機関で経験を積むチャンスもあります。 私はUNV(国際機関でのボランティア)に登録していました。国連機関での経験をつむいい機会だと思います。

就職活動に際してのアドバイス 

就職活動のKeyword

・専門的な能力
・職務経験(途上国経験など)
・学位
・語学力
・コニュニケーション力
・ネットワーキング力(誰を知っているではなく、知られていることが重要)
・履歴書・面接
・ダイバーシティ
・タイミング

どれかが1つあればよいという絶対的なものはありません。常にこれらのコンビネーションを柔軟に考えてください。

留意いただきたい点 

・自分が何をしたいか考える(あなたは何のプロになりたいですか?)
 国際機関はキャリア選択肢の1つであり、本当にやりたい仕事を行う場所がたまたま国際機関である
・夢は大切だが現実も見る
・大事なことは、どこでも同じ
・期限を設けて、長丁場で考える
・ある程度チャレンジしてもショートリストされない場合は、戦略を根本的に見直す

就職にはタイミングもありますが、簡単にあきらめないことも重要。私も実際、30件以上の職に応募しました。また、いきなりやりたいことだけに絞り込むのではなく、長期的な戦略も重要です。例えば、今までのバックグラウンドを活かして、最初のポジションを得た後に、徐々に自分の分野を広げながら経験を積み、次のキャリア考える方法もあります。

※富永さんの就職活動例は、第2部をご覧下さい。また、富永さんは人事オフィサーですが、採用担当ではありません。富永さんの就職活動経験に基づくアドバイスとしてご覧下さい。

第二部:国際機関の仕事と留学の意義について

自己紹介

大学卒業後は、準総合職で就職したものの、実は、大学卒業後にこれといったキャリアビジョンはなく、結婚後退職&専業主婦という道に何の疑いも持っていませんでした。 ですが、結婚後会社を退職し、仕事のない人生を初めて経験した時に、大きなショックを受けました。私は社会から必要とされていないと感じ愕然としたのです。ただ、当時の私には、仕事として、特にこれをやりたいと思うものはなく、自分の自由になるお金がほしい、仕事をすることで社会との接点がほしいという思いで派遣社員として働き始めました。

派遣社員の仕事が今後の人生を考えるきっかけに- 自分のプロフェッショナルな領域を持ちたい

派遣社員として多くの会社/社員の方を見ていると、今までに気付かなかった自分の仕事の志向が見えてきました。また、時給いくらで数ヶ月契約で更新していく派遣社員の不安定さを実体験したことで、自分もプロフェッショナルなフィールドを持ちたいと感じるようになったのです。ここから、私が自分のキャリアを考え、行動する人生が始まりました。

まず、私の志向性を考えた際に、海外旅行が好きで海外に興味があること、人が好きということだとを認識しました。そして、これを活かせる仕事は何だろうと考えたところ、外資系の人事という選択が浮かんできました。そして、できるだけその仕事に近づけられるように戦略を立てました。

それから英語です。私は英語はあまり好きでなく大学卒業当時のTOEIC(R)TESTは450点程度でした。そして、教育分野の経験はあったものの、いわゆるコアの人事という仕事についても経験がありませんでした。経験不足をカバーするために社会保険労務士の資格取得のための勉強をし、また英語も勉強しました。英語は、机上の勉強だけでなく、外資系企業での派遣業務で実務を通じた練習が、英語力アップの大きな後押しとなったと思います。その結果、TOEIC(R)TESTを900点近くまで上げることができました。

社会保険労務士に合格した後は、アウトソージング会社で社労士業務の経験を積みました。十分に経験を積んだ後に転職したトレンドマイクロ株式会社の人事部では、さまざまな人事制度企画に携わることができました。ここでの経験はその後留学のためのエッセイや就職活動に大きく生きることとなりました。

私のキャリアはまだまだ発展途上ですが、今振り返ってみると、派遣社員の時代にさまざまな学びをしたからこそ、今の自分があるのだと、派遣経験が私の自律的キャリアの原体験であると思っています。

留学のきっかけを教えてください- 人事のキャリアをさらに伸ばしたい

トレンドマイクロでの人事の経験は、私にとって、とても貴重な経験となりました。さまざまな人事業務を行う中で、人材教育/組織開発/HR developmentを次のステップとして携わりたいと考えるようになりました。父が定年後に留学したことも影響し、自分の人生の中で留学熱が高まっていったことも一因です。

留学を決意してから、合格までのプロセスについて 

準備も戦略的にかつ自分のやりたいことの軸を持つことの重要性

2004年12月に留学を意識したのですが、事前の留学知識などまったくありませんでした。よくよく調べていくと、けっこう大変そうだなと、戦略的に準備を進めていく必要があることを知り、本格的に留学準備を始めました。奨学金も調べ、ロータリー財団とフルブライト奨学金に応募しました。また、エッセイ作成のために、コンサルタント資格取得やキャリアコンサルティング経験など、職務経験以外の経験も戦略的に増やしていきました。

留学先を選ぶにあたっては、プログラムの内容を詳しく調べました。学会から教授の名前を探したり、ランキングを参考にしたり、ほとんど趣味の域に達していたと思います。(笑) 進学先を決める際に、合格をいただいた大学のうち、二つの学校、ジョージ・ワシントン大学とコロンビア大学どちらの学校に進学するか、とても迷いました。知名度からすると圧倒的にコロンビア大学に軍配があがり、実際に日本人ではほとんどの人にコロンビア大を勧められました。

一ヶ月くらいかけてどちらがいいか迷いに迷い、いろいろな人に相談しました。学校経由で日本人在校生にコンタクトを取り、現地の情報を確認しながら、私が大学院に求めるものを確認しました。 検討した結果、教授のバックグラウンド、少人数制クラス、社会人学生が多い環境、そしてプログラム内容を再度確認し、ジョージワシントン大学への進学を決めました。最後は正直、直感です。DCという街が好きという理由もありました。

結果として、この選択は大成功でした。コロンビア大学に進学していたら今の私はないと思っています。 自分の心に聞いて、やりたいことを確認して、自分なりの選択をすることがとても重要です。

学校選択に関するアドバイス- 予算、場所、教授、プログラム内容など自分がはずせないと思う要素がどれなのかを知ること

確かに、D.CやNYの地の利は就職活動に有利だと思います。DCは金融系機関、政府機関、DCベースのNGO機関が多く存在し、情報や機会の多さというのは大きな強みです。ただし、ロケーションだけではなく、教授のコネクションやプログラム内容など総合的に考えることが重要です。

奨学金はお金以上の効果大- ぜひ皆さんもチャレンジしてください

奨学金は私の留学生活には切り離せないものでした。金銭的な負担軽減はもちろんのこと、ネットワークにとても効果的だったからです。ロータリー財団では、地元のロータリークラブと交流でき、現地の人が親切にサポートしてくれました。 フルブライトでは、世界中のフルブライト奨学生と交流できたことがとても面白かったですし、いろいろな国から来ている友達もできました。また、アメリカにおいてフルブラと奨学金の信用の高さは、生活面や就職活動などに大きく役立ちました。 私の履歴書にはフルブライトとロータリーの奨学金を獲得したことを必ず明記するようにしています。

奨学金獲得は一見とても難しいというイメージをお持ちの方も多いと思いますが、今までの研究/社会人経験を上手く活かして説明することで、可能性は開けるものです。私の場合は、社会人経験を上手く活用した形でアピールしました。ぜひ、皆さんもチャレンジしてください。

留学生活について教えてください- インターンシップが今後のキャリアに

クラスでの勉強ももちろんですが、インターンシップを通じた実務経験の割合も大きかったと思える留学生活でした。クラスのペーパーやディスカッションでは、社会人経験を上手く活用し話に盛り込むことができたのがよかったと思っています。もちろん、1年目は多く授業を取ったせいか、ワークロードは高かったですが、プランを立てて、やらなくてはいけないことをこなすことで乗り切りました。ですが、勉強ばかりではなく、授業で知り合ったクラスメートとリフレッシュしたり、充実した日々を過ごしていました。第二の青春って感じですかね。 そして、何よりも私の中では、インターンシップが学生生活の中で大きなウェイトを占めていたと思います。私は1年目が終わった5月にSHRMという人事プロフェッショナルの団体でインターンを開始しました。

インターンシップについて- インターンシップ獲得のコツは戦略的かつ行動的に 

2年目には国際機関の1つであるUNICEFでもインターンをしましたが、後々の就職活動を有利にするためにも、国際機関でのインターンシップを考えている方は、1年目に行うことを強くお勧めします。何事も計画性が重要ですね。

私は、実は留学当初国際機関で働きたいということは考えていませんでした。 アメリカと日本の人事制度の違いが学べるところでインターンがしたいという思いで、友達の知り合いの上司から、Society of Human Resources Management(SHRM)の方を紹介いただき、インターンができるようお願いしました。SHRMでインターンができたということは私にとってすばらしい経験になったと同時に、後々仕事を得る上で強いサポートになりました。というのは、アメリカの人事プロフェッショナルでSHRMの名を知らない人はいないレベルの世界一大きな人事団体ですので、ここでのインターン経験は人事スペシャリストとしての信頼性を高めることに大きくつながったからです。

また、SHRMでのインターンのつながりから、IMFへの就職の足がかりを得ることもできました。アメリカでは前職の上司のリファレンスと教授のリファレンスが就職の際にとても重要になってくるので、就職活動の際に、SHRMの上司から、私の人事としての実績に太鼓判を押していただけたことには、とても感謝しています。

そして、2年目のSHRMでのインターンを続けながら、同時並行でUNICEF(NY)でのインターンも行いました。両立は最初難しいと思ったのですが、私の場合は、UNICEFの上司の方が融通を利かせて下さり、暖かくサポートしてくださったおかげで乗り切ることができました。UNICEFの上司は今でも私の大切なメンターです。

国際機関で働きたいと当初考えていなかった富永さんが、国際機関を目差すきっかけとは?

1年目の春学期に取ったInternational and Multicultural HRD の授業の影響です。このクラスは、多様なバックグラウンドを持つ人が集まるチームの中で、どのようにすればパフォーマンスをあげることができるかということを学ぶのですが、その授業の課題の1つとして、国際機関で働く人にインタビューをするというものがありました。

私は、当然人事の方に話をしたいと思い、ロータリークラブの方に紹介していただいた国際機関の日本人担当者にインタビューをする中で、国際機関での人事に興味を持ったことがきっかけです。 ですが、当時私は、国際機関でどのような就職する方法があるのか全く知りませんでしたが、たまたま、友達が私の大学で外務省関係の方の講演会を企画し、先ほどお伝えしたような制度についてはじめて知ることとなりました。しかし私はJPOその他の年齢制限も過ぎていましたし、また自分の職種についての詳しい話が聞けなかったため、後日連絡のうえ、その方のニューヨークにあるオフィスに出向き、詳しく話しをうかがうことができました。その方はとても親切に相談に乗ってくださり、UNICEFの日本人人事担当者を紹介してくださったのです。このご縁で、UNICEFでのインターンシップも可能になりました。

積極的にいろいろな人に会って、その相手から学ぶこと

上記のように、私のインターンシップ、就職活動の成功のカギは、「積極的にいろいろな人に会って、その相手から学ぶこと」です。世の中にはいろいろなことを達成されている方がたくさんいて、学べることがたくさんあります。そして、多くの方はこちらが誠実な気持ちで学びの気持ちをお伝えすれば、快く答えてくださるものです。私は年齢、性別、人種関係なくいろいろな方にお会いして、意見交換もしましたし、さまざまなことを学びました。たとえばスイスに本部のある国際機関はどうだろうかと、ジュネーブにILO/WHO/UNHRの日本人人事の方に話を聞きに行ったり、パリにも行き、OECDの人事の方に話しを聞いたりと、かなり積極的に人と会うということを行いました。その中で、自分の考えを煮詰めたり、感覚を養ったりしました。 私は人に会って話を聞くのが好きなので、とても楽しんでそれを行うことができました。 ただ、こういうと私が闇雲に人に会っているようですが決してそうではありません。基本的に表面的な付き合いはできないタイプなので、自分が本当にあってみたい、お話してみたい人だけにお会いいただくことがほとんどです。便宜を図ってほしいなどの下心があると相手は必ず見抜くものです。

留学に行かれて、変わったと感じることは?見えてきたと思うことは?

留学をしてみて思ったことは、「世界のどこにいても自分は自分。大切なことはどこでも同じであるということ」。 私は留学前にアメリカで働いた経験はありませんでしたが、結局、アメリカでも日本でも大切なことはどこでも同じであり、結局能力を発揮する場所が変わっただけでだけということに気付いたことです。 また、アメリカでの生活の中で、日本を客観的に見れるようになりました。例えば、仕事面などでは、日本における女性というプレッシャー/年齢面というプレッシャーなど見えない壁が多いことが、アメリカにいるからこそ分かります。そして、アメリカでは、年齢/性別を気にしない働くことができ、とても自然に働けることに喜びを感じています。

これから国際舞台で活躍したい方へのメッセージをお願いします

国際機関で働く日本人はまだ少ないのが実情です。 国際公務員は、一見難しいと思われる方も多いかもしれませんが、必要な情報/戦略を持てば不可能ではないと思います。 常に自分はどうしたいのかを考え、その結果国際機関で働くことが選択肢の一つとなれば、それに向かって努力をしていけば、誰かと出会い、道が開けると思います。 いろいろと批判されることもある国際機関ですが、やはりそこでの仕事は社会的意義が高いと思います。人生経験としてもご自身の視野を広げる環境が揃っていますので、ぜひ挑戦してください。