Personal Statement の位置づけ

まもなく9月となり、LL.M.出願に向けた書類準備を本格的に始める時期となりました。今回はPersonal Statement (以下、PS)の執筆方法について説明します。

LL.M. 出願において、PSは重要な役割を担います。その理由は、多くのプログラムが基本的に「書類審査のみ」で合否を判断し、面接を実施しないためです。すなわち、PSは出願者が自らの動機や将来像(目標を含)を直接伝える唯一の機会であり、合否に大きく影響する文書といえます。

評定平均値(GPA)、経歴書(CV)、推薦状といった他の出願資料からは、出願者の人物像や問題意識を十分に読み取ることはできません。PSは、これらの数値や経歴の背後にある「なぜ学びたいのか」「その学びをどのように活かすのか」といったストーリーを提示し、出願者を一人の人間として総合的に理解してもらうための文書です。

さらに、欧米のロースクールでは、PSにおいて自己主張を伴う論理的な文章構成と具体性が強く求められます。欧米の入学審査官は、「出願者の強み・問題意識・将来像を明確に語る力」を高く評価します。

以下では、PS執筆の各要点を整理します。

1. 学術的関心・実務経験(Academic & Professional Background)
自分の法的関心分野を明確にし、それがこれまでの職業経験やキャリアとどのようにつながっているかを示します。単なる経歴の羅列ではなく、「なぜその分野に関心を抱くに至ったのか」を具体的なエピソードを通じて描くことが大切です。

• 大学・司法修習・職務経験の中で特に印象的な案件や活動を取り上げる。
• 「何を経験したか」だけでなく「その経験から何を学んだか/何を課題と感じたか」を明示する。
• ネガティブな体験や制度的な限界に触れる場合でも、それを単なる不満として描かず、「例:だからこそ比較法的な視点を学びたい」という前向きな結論へと導く。
• 実務経験や研究活動の具体例を1〜2件に絞り、そこから得た問題意識を明確にする。
• その問題意識が、米国法/英国法や国際的基準を理解する必要性につながることを説明する。

例)私が米国法を学ぶ必要性を強く意識したのは、◯◯の案件を担当した際でした。その過程で、契約解釈や訴訟戦略において日本法の枠組みだけでは十分に対応できない課題に直面しました(ネガティブな経験)。この経験を通じて、米国の制度を理解し比較法的な視点を取り入れることが不可欠である(米国法を学ぶ必然性**)と痛感し、LL.M. プログラムへの進学を決意するに至りました。

**米国法を学ぶ必然性を経験から導く
・国際取引や規制の多くが米国法を前提としている点を指摘する。
・実務上の課題解決に米国法の知識が不可欠であることを説明する。

こうした記述を通じて、「現在のキャリアを一時的に中断してでも留学する必然性」入学審査官に納得してもらうことを目指してください。

2. 進学希望先のロースクールでの学びの意義(Why ◯◯ Law School?)
次に、自分の将来の目標を達成するためには「なぜそのロースクールでなければならないのか」を示します。

• 自分の関心分野に対応する授業・プログラム・研究センターを具体的に挙げる
• 教員の研究領域との関連性を示す(例:テクノロジー法、環境法、独占禁止法など)。
• 他校でも言える一般的な志望理由ではなく、「そのロースクールで学ぶ必然性」を提示する。

3. 将来のキャリア目標(Professional Goals)
最後に、修学経験をどのように社会や職場に還元するのかを描きます。
• LL.M. 修了後のキャリアプランを具体的に描く(例:国際案件への対応力を高める、政策形成に活かす、司法制度の改善に寄与する など)。
• 「どのような職務に戻るのか」「どのような役割を果たしたいのか」を具体的に述べる。
• 個人のキャリアにとどまらず、所属組織・業界・社会全体への還元を意識する。
• 「個人の成長」+「社会的貢献」を盛り込むことで文章に説得力が生まれる。

PS は単なる経歴紹介ではなく、「過去の経験 → 現在の課題 → 留学による学び → 将来の貢献」 という一貫した流れを描くことで説得力を持ちます。読者(入学審査官)が自然に納得できるストーリーを意識しながら執筆を進めていきましょう。

Eiki Satori

投稿者: AGOS Consulting Team

@AgosJapan (formerly Princeton Review of Japan) – 25 years of experience. Best MBA, LL.M, and MPP admissions results in Japan.