日本語に訳さない「on」(その2)– by 加藤

(※以下は、前回の私のブログ記事である『日本語に訳さない「on」 (その1)』の続き(完結編)です。)

さて、以前もこのブログに登場しましたが、私の米国大学院留学中の親友にStevenという米国人男性がいました。

この彼が、可愛い恋人に振られたばかりのころは、涙目(ホントに!)で次のように言っていました:

She dumped me.

「彼女は僕を(まるでゴミでも捨てるかのように)振ったんだ。」

dumpは「(ゴミなど不要なもの)を捨てる」が原義です。ダンプカーが不要な土砂を捨てているところをイメージしてみてください。「恋人を振る」という意味もあります。どちらにしろ、結構強烈(!)な表現ですね。

それから3,4カ月が経過して、大分気持ちも落ち着いてきたころには、もうちょっとマイルドな表現に変わりました:

(4)  She walked out on me.

「彼女は僕を見捨てた。(→ 彼女は僕を振ったんだ。)」

walk out onというイディオムで「(人)を見捨てる(= desert)、(人)の元を去る」という意味を載せている辞書もあります。プイっと怒って出ていく場面をイメージすると良いでしょう。どちらにしろこのonも、前回のブログ記事の例文(2),(3)と同様に、

「[不利益] 《口語》 (人)に向けられて、(人)の不利になるように」

の意味ですね。

以上のSteven(このブログでは2回目の登場)のこのお話も実話です。

「日本語に訳さない『on』」のお話でした。

日本語に訳さない「on」(その1)– by 加藤

今回は英語の前置詞の用法に関するお話です。

前置詞のonは「~の上に」という意味で覚えていらっしゃいますか?

しかし、それだけでなく、「~の表面に(接触して)、~にくっついて」の意味があることは、ご存じの方も多いでしょう。

たとえば、次の用法です:

(1)  There is a fly on the ceiling [wall].

「天井[壁]に(一匹の)ハエが(とまって)いる。」

このonはまさしく後者の意味ですね。物理的に「~の上に」ではありません。

さて、では次のonはどんな意味でしょうか?

(2)  She hung up on me.

「彼女は(失礼にも一方的に)電話を切ってしまった。」

(3)  He died on us.

「私たちは彼に先立たれた。」

上記2文にあるonは、単体ではなかなかうまい日本語に訳せません。また、訳さないことが多いです。

『新英和大辞典』(研究社)には、onの意味の一つとして、次のようにあります:

 [不利益] 《口語》 (人)に向けられて、(人)の不利になるように

上記の例文(2)と(3)のonは、まさにこの意味とニュアンスですね。

(『日本語に訳さない「on」 (その2)』に続きます。1週間後にアップ予定です。)

意外な動名詞(その2) — by 加藤

(※以下は私の前回の記事である「意外な動名詞(その1)」の続き(完結編)です。)

Several parts in my computer need replacing.

この英文の最後の部分であるreplacingはto be replacedとすることもできますが、原文のままでもまったく正しいものです。そのわけは次のとおりです。

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『ロイヤル英文法』(綿貫ほか著、旺文社)のp.528には次のようにあります:

【注】 受動の意味の動名詞:

want, need, require, deserve, bear, be worthなどの後にくる動名詞は能動態で受動の意味を表す

This watch needs repairing (= to be repaired).

(この時計は修理する必要がある)

**************************************************

これが分かると上級者入りできます。

さて、ここからはおまけです。

私が日本の大学2年生の時、ESS(英語研究部)の英語スピーチコンテスト予選に参戦しました。スピーチを終えて、ネイティブの審査員から手渡された私のスピーチの評価票には次のようなコメント(アドバイス)がありました:

Your pronunciation needs some practicing.

(筆者注:実話です。。。(汗))

この時から発音を上達させるべく、必至に頑張ることにしました。

千里の道も一歩から(笑)。

アゴスで一緒に頑張りましょう!

TOEFL ITP®︎テスト“デジタル版”の情報

アゴスのウェブサイトをご覧になっておられる方の中には、所属している大学・高校・団体などを通して、iBTではなくITPの形態のTOEFLを近々受験されるという予定の方もおられるかと思います。

TOEFLテスト日本事務局であるETS Japan TOEFL事業部の担当者の方より、2020年よりスタートした「TOEFL ITP®︎テスト “デジタル版”」について是非お知らせして欲しいとご依頼頂きました。

“デジタル版”はインターネット接続により自宅からでも受験が可能なフォーマットで、今年・2022年の春より新しいオプションとしてスピーキングセクションが実施できるようになる、とのことです。

テストの概要や詳細な情報は以下をご覧下さい。

https://www.toefl-ibt.jp/toefl-itp/testtaker/

意外な動名詞(その1) — by 加藤

今回は至って真面目なお話です。英語の語法に関するものです。

アゴスのTOEFL iBT® Writing Foundationクラスのテキストに、「基礎ミスチェック」というエクササイズがあります。TOEFLライティング・セクションのIndependent Task essayで日本人受験者が犯しがちな間違いを探して訂正する、という練習問題です。以下の英文にはよくある間違いが含まれています。皆さんはどこが間違いか分かりますか?(間違いは1箇所とは限りません。)

* Several parts in my computer needs replacing.

(同クラスのマニュアルp.16より)

そうですね! 主語の核心部分がseveral partsと複数形ですから、動詞もそれに合わせてneedsではなくneedとすべきですね。これが間違いです。まずこれが分かれば初級者としては合格です。

さらに、結構英語がお出来になる方(中級者以上)も、replacingをto be replacedに訂正すべきだと主張されます。この英文が言いたいことは、「私のパソコンのいくつかの部品は、(新しいものに)交換される必要がある」という受身の意味ですから、そう考えるのもごもっともです。

しかし、to be replacedとすることも可能ではありますが、この部分はあえて訂正する必要がありません。原文のままでも正しいのです。

なぜでしょうか?

その答えは『その2』でお話しいたします。(※1週間後にアップ予定です。)

定冠詞にはわけが「アリ」ます。(その2) — by 加藤

(※以下は、前回の私の記事である『定冠詞にはわけが「アリ」ます。(その1)』の続き(完結編)です。)

さて、その大試合(「アントニオ猪木 vs. モハメド・アリ」の異種格闘技戦)前の記者会見だったか、調印式だったかでのお話です(何しろ今から数十年前のことなので、記憶が一部ごちゃまぜになっているのをお許しください)。

一触即発の張り詰めた空気の中で、アリは猪木の突き出た下顎を指して「お前はペリカンだ! ペリカン野郎!」と挑発しました。一方、猪木も負けてはいません。なんと、「『アリ』は日本語で虫けら(=蟻)を意味するんだよ!」とやり返しました。「ペリカンと蟻」の戦いです(笑)。なんとも。。。

それに激怒したアリは、「I’m THE champion! I’m THE champion! (THEの部分を強調して)」と大声で叫んでいたのを憶えています。(この前後関係と繋がりは不正確かもしれませんが、最後のこの英語のセリフを言っていたのは間違いありません。後に、同じく格闘技ファンである高校の英語教師も同じことを言っていましたので。)

実はこの定冠詞のtheを強調して発話していたのには、わけが「アリ」ます。(やっと、このブログ記事のタイトルに繋がりましたね!(笑))。

このthe championは「『世界で一人だけの(本物の)』チャンピオン」、また、「『世界的に超有名なあの』チャンピオン」という意味なのです。つまり、「猪木なんぞはチャンピオンでもなんでもなく、無名で偽物(fake)の、ペリカン野郎だ!」と言わんとしていたというわけです。

このように、定冠詞のtheは「世界で唯一の」や「皆が知っている」という、話者と聞き手の間に「共通認識」があることを意味するものなのです。

(ちなみに、定冠詞の用法については、アゴスのTOEFL iBT® Writing FoundationクラスのDay 3で徹底的に学びます。是非ご受講してみてください!)