日本語に訳さない「with」(その2)– by 加藤

(※以下は、私の前のブログ記事「日本語に訳さない「with」(その1)」の続き(完結編)です。)

Take everything with you.

「荷物はすべて持っていってください。」

さて、このwithですが、日本語にはうまく訳せません。むしろ、訳さないものです。

その意味や用法として、手元にある『ジーニアス英和辞典』(大修館)の「with」の項目には、次のような意味と例文が載っています:

④ [携帯] (人)の身につけて

I have no money with [on] me.

「お金の持ち合わせがない。」

Take an umbrella with you.

「傘を持っていきなさい。」

ちなみに、これと全く同じ用法のwithが、アゴスのたとえば、「TOEFL® Reading Strategyクラス」のマニュアルにも出てきます。

【Manual p. 23】

The nineteenth century brought with it a burst of new discoveries and inventions that revolutionized the candle industry and made lighting available to all.

【Manual p. 103】

Glaciers may form in permanently cold areas, and these slowly moving masses of ice cut out valleys, carrying with them huge quantities of eroded rock debris.

(出典: The Official Guide to the TOEFL iBT Test, 6th ed., pp. 41, 231)

ここでは、あえて訳は載せないことにいたします。

どちらも授業内では設問に絡めて説明しています。よろしければ、是非ご受講してみてください。

日本語に訳さない「with」(その1)– by 加藤

私が日本の大学2年生だった頃のお話です。

私がいた都市(国内)に、ある日、カナダからカルガリー・スタンピード・ショーバンドの一行がやってきました。メンバーはカナダの高校生や大学生、総勢約110名でした。

彼らは昼間に一日市内観光をバス数台で楽しみ、夜には、コンサートホールで自ら演奏会を行うというスケジュールでした。その日中の市内観光の際に、「にわか通訳ガイド」として駆り出されたのが、私たちESS(英語部)のメンバーたちでした。それぞれの観光バスには、バスガイドが一名と、その通訳として私たち学生が一名ずつ随行することになりました。つまり、バスガイドさんが日本語で観光案内していることを、私たちボランティアがマイクをもう一本持ってすべて英語に訳すという仕事です。

当時の私の英語力は決して高いとは言えず、冷や汗をかきながら、ガイドさんの説明の中でも特に大事そうな部分だけをまとめて英語に訳してはお茶を濁していました。バスがいよいよ最後の観光スポットに到着しました。ガイドさんが、「もうこのバスには戻ってきませんので、持ち物はすべてお持ちください」と言いましたので、私はたぶん次のような英語にしたのだろうと思います:

This is our final destination. Please *bring all your belongings.

上記の*の部分は間違いです。乗客たちはちょっと「?」のような反応でした。

そこで、近くに座っていた金髪で青い目の美人カナダ人女子高生が私に、

「『Take everything with you.』って言えばいいのよ♪」と親切に助け船を出してくれました。

すぐさま、私はマイクを通じて言い直したことは言うまでもありません。バスの乗客であるカナダ人たちは全員自分たちの荷物を無事持っていってくれて、ほっとしたものです。。。

それにしても、なんとも簡単な英単語(中学生レベル)の羅列にしかすぎない、「Take everything with you.」の一言だけで簡単に片が付くんだということが分かり、心地よいショックと感動を受けたのを、今でも鮮明に覚えています。

(※「その2」に続く。1週間後にアップ予定です。)

日本語に訳さない「on」(その2)– by 加藤

(※以下は、前回の私のブログ記事である『日本語に訳さない「on」 (その1)』の続き(完結編)です。)

さて、以前もこのブログに登場しましたが、私の米国大学院留学中の親友にStevenという米国人男性がいました。

この彼が、可愛い恋人に振られたばかりのころは、涙目(ホントに!)で次のように言っていました:

She dumped me.

「彼女は僕を(まるでゴミでも捨てるかのように)振ったんだ。」

dumpは「(ゴミなど不要なもの)を捨てる」が原義です。ダンプカーが不要な土砂を捨てているところをイメージしてみてください。「恋人を振る」という意味もあります。どちらにしろ、結構強烈(!)な表現ですね。

それから3,4カ月が経過して、大分気持ちも落ち着いてきたころには、もうちょっとマイルドな表現に変わりました:

(4)  She walked out on me.

「彼女は僕を見捨てた。(→ 彼女は僕を振ったんだ。)」

walk out onというイディオムで「(人)を見捨てる(= desert)、(人)の元を去る」という意味を載せている辞書もあります。プイっと怒って出ていく場面をイメージすると良いでしょう。どちらにしろこのonも、前回のブログ記事の例文(2),(3)と同様に、

「[不利益] 《口語》 (人)に向けられて、(人)の不利になるように」

の意味ですね。

以上のSteven(このブログでは2回目の登場)のこのお話も実話です。

「日本語に訳さない『on』」のお話でした。

日本語に訳さない「on」(その1)– by 加藤

今回は英語の前置詞の用法に関するお話です。

前置詞のonは「~の上に」という意味で覚えていらっしゃいますか?

しかし、それだけでなく、「~の表面に(接触して)、~にくっついて」の意味があることは、ご存じの方も多いでしょう。

たとえば、次の用法です:

(1)  There is a fly on the ceiling [wall].

「天井[壁]に(一匹の)ハエが(とまって)いる。」

このonはまさしく後者の意味ですね。物理的に「~の上に」ではありません。

さて、では次のonはどんな意味でしょうか?

(2)  She hung up on me.

「彼女は(失礼にも一方的に)電話を切ってしまった。」

(3)  He died on us.

「私たちは彼に先立たれた。」

上記2文にあるonは、単体ではなかなかうまい日本語に訳せません。また、訳さないことが多いです。

『新英和大辞典』(研究社)には、onの意味の一つとして、次のようにあります:

 [不利益] 《口語》 (人)に向けられて、(人)の不利になるように

上記の例文(2)と(3)のonは、まさにこの意味とニュアンスですね。

(『日本語に訳さない「on」 (その2)』に続きます。1週間後にアップ予定です。)

意外な動名詞(その2) — by 加藤

(※以下は私の前回の記事である「意外な動名詞(その1)」の続き(完結編)です。)

Several parts in my computer need replacing.

この英文の最後の部分であるreplacingはto be replacedとすることもできますが、原文のままでもまったく正しいものです。そのわけは次のとおりです。

**************************************************

『ロイヤル英文法』(綿貫ほか著、旺文社)のp.528には次のようにあります:

【注】 受動の意味の動名詞:

want, need, require, deserve, bear, be worthなどの後にくる動名詞は能動態で受動の意味を表す

This watch needs repairing (= to be repaired).

(この時計は修理する必要がある)

**************************************************

これが分かると上級者入りできます。

さて、ここからはおまけです。

私が日本の大学2年生の時、ESS(英語研究部)の英語スピーチコンテスト予選に参戦しました。スピーチを終えて、ネイティブの審査員から手渡された私のスピーチの評価票には次のようなコメント(アドバイス)がありました:

Your pronunciation needs some practicing.

(筆者注:実話です。。。(汗))

この時から発音を上達させるべく、必至に頑張ることにしました。

千里の道も一歩から(笑)。

アゴスで一緒に頑張りましょう!

TOEFL ITP®︎テスト“デジタル版”の情報

アゴスのウェブサイトをご覧になっておられる方の中には、所属している大学・高校・団体などを通して、iBTではなくITPの形態のTOEFLを近々受験されるという予定の方もおられるかと思います。

TOEFLテスト日本事務局であるETS Japan TOEFL事業部の担当者の方より、2020年よりスタートした「TOEFL ITP®︎テスト “デジタル版”」について是非お知らせして欲しいとご依頼頂きました。

“デジタル版”はインターネット接続により自宅からでも受験が可能なフォーマットで、今年・2022年の春より新しいオプションとしてスピーキングセクションが実施できるようになる、とのことです。

テストの概要や詳細な情報は以下をご覧下さい。

https://www.toefl-ibt.jp/toefl-itp/testtaker/

意外な動名詞(その1) — by 加藤

今回は至って真面目なお話です。英語の語法に関するものです。

アゴスのTOEFL iBT® Writing Foundationクラスのテキストに、「基礎ミスチェック」というエクササイズがあります。TOEFLライティング・セクションのIndependent Task essayで日本人受験者が犯しがちな間違いを探して訂正する、という練習問題です。以下の英文にはよくある間違いが含まれています。皆さんはどこが間違いか分かりますか?(間違いは1箇所とは限りません。)

* Several parts in my computer needs replacing.

(同クラスのマニュアルp.16より)

そうですね! 主語の核心部分がseveral partsと複数形ですから、動詞もそれに合わせてneedsではなくneedとすべきですね。これが間違いです。まずこれが分かれば初級者としては合格です。

さらに、結構英語がお出来になる方(中級者以上)も、replacingをto be replacedに訂正すべきだと主張されます。この英文が言いたいことは、「私のパソコンのいくつかの部品は、(新しいものに)交換される必要がある」という受身の意味ですから、そう考えるのもごもっともです。

しかし、to be replacedとすることも可能ではありますが、この部分はあえて訂正する必要がありません。原文のままでも正しいのです。

なぜでしょうか?

その答えは『その2』でお話しいたします。(※1週間後にアップ予定です。)

定冠詞にはわけが「アリ」ます。(その2) — by 加藤

(※以下は、前回の私の記事である『定冠詞にはわけが「アリ」ます。(その1)』の続き(完結編)です。)

さて、その大試合(「アントニオ猪木 vs. モハメド・アリ」の異種格闘技戦)前の記者会見だったか、調印式だったかでのお話です(何しろ今から数十年前のことなので、記憶が一部ごちゃまぜになっているのをお許しください)。

一触即発の張り詰めた空気の中で、アリは猪木の突き出た下顎を指して「お前はペリカンだ! ペリカン野郎!」と挑発しました。一方、猪木も負けてはいません。なんと、「『アリ』は日本語で虫けら(=蟻)を意味するんだよ!」とやり返しました。「ペリカンと蟻」の戦いです(笑)。なんとも。。。

それに激怒したアリは、「I’m THE champion! I’m THE champion! (THEの部分を強調して)」と大声で叫んでいたのを憶えています。(この前後関係と繋がりは不正確かもしれませんが、最後のこの英語のセリフを言っていたのは間違いありません。後に、同じく格闘技ファンである高校の英語教師も同じことを言っていましたので。)

実はこの定冠詞のtheを強調して発話していたのには、わけが「アリ」ます。(やっと、このブログ記事のタイトルに繋がりましたね!(笑))。

このthe championは「『世界で一人だけの(本物の)』チャンピオン」、また、「『世界的に超有名なあの』チャンピオン」という意味なのです。つまり、「猪木なんぞはチャンピオンでもなんでもなく、無名で偽物(fake)の、ペリカン野郎だ!」と言わんとしていたというわけです。

このように、定冠詞のtheは「世界で唯一の」や「皆が知っている」という、話者と聞き手の間に「共通認識」があることを意味するものなのです。

(ちなみに、定冠詞の用法については、アゴスのTOEFL iBT® Writing FoundationクラスのDay 3で徹底的に学びます。是非ご受講してみてください!)

定冠詞にはわけが「アリ」ます。(その1) — by 加藤

英語の話に絡めて、映画鑑賞や音楽鑑賞が私の趣味であると、これまでお話ししてきました。

実は私のもう一つの趣味に、格闘技観戦があります。

これまた皆さんのほとんどがお生まれになる前のお話で恐縮です。(私の話はほぼすべてが古い時代のものですので、あしからずご承知おきください。)

時は1976年、私がまだ中学生だった頃です。テレビで「格闘技世界一決定戦」が放映されました。歴史に残る一戦なので、格闘技ファンなら若い方でも聞いたことがあると思います。「アントニオ猪木vs.モハメド・アリ」の異種格闘技戦(ヤラセなしのリアルファイト)@武道館でした。猪木はプロレスラー、アリは米国のボクシング世界チャンピオンです。大の格闘技ファンである父と私はテレビにかじりついて観戦したものです。

この大イベントはそれまでの宣伝が非常に華々しく、また、事前の調印式や記者会見なども日米で大々的に放送されて、世界中の注目を浴びていた世紀の一戦でした。(後付けの知識ですが、その試合はなんと世界34か国で放映されたそうです。)

それで、結局その試合の内容と結果は、、、と言うと、多くのファンをがっかりさせる内容でした。ハードパンチを避けるため、猪木は15ラウンドのほとんどでリングの床に背をつけ寝転がったままの姿勢でアリの足をキックするだけ。アリはパンチをほとんど出せずで、お互いの良さがまったく出ない試合でした。結果は引き分けでしたが、私も随分がっかりして見終わったのを憶えています。

さて、こんな格闘技のお話が、英語の定冠詞と一体どういう関係があるのでしょうか? そのわけは、同タイトル記事の『その2』でお話ししたいと思います(※1週間以内にアップ予定です)。

紅茶と一緒にスコーン?– by 加藤

私が日本で大学3年生だった頃のお話です。

当時私はESS(英語部)部員であり、また、他大学とのESS連盟(十数の大学の英語部からなる連合組織)の委員でもありました。

その日は、大学対抗英語弁論大会が開催され、私はその実行委員の一人でした。

10人ほどのコンテスタント(Speakers)による英語スピーチがすべて終わりました。審査員控え室では、3人の審査員(米国人教授、英国人教授、米国で博士号を取った日本人教授)が真剣な表情で入賞者を厳選していました。

なんとか審査が終了し、結果発表の時刻までには少し時間が余りました。

そこで、私は3人の審査員の先生方に向けて、

Please have some tea and cookies, and wait for another 15 minutes or so.

と言いました。

そうすると、おもむろに英国人教授が持ち前の強いイギリス訛で言いました。

Those are not cookies. Those are biscuits!

ちょっと不機嫌そうな表情に見えました。

私は一瞬何が起こったのかが分かりませんでしたが、一拍の沈黙を置いて、残り2名の審査員(米国人教授と米国で博士号を取った日本人教授)が、

Ah! Oh, yes.

と合点が行ったという様子でした。2人とも笑っています。英国人教授も笑顔になっています。

私もすぐに状況が飲み込めました。そこにあったお茶菓子は、アメリカ英語ではcookiesだが、イギリス英語ではbiscuitsである、ということですね。「日本語でもビスケットという言い方もあるしな」と、私も心の中で合点が行っていました。(加えて、英国人の方は一般的に、イギリス英語こそが本家本元の正統派であるという誇りを抱いているので、その点もほのめかしているようでもありましたが。)

どちらにしても、その後は3人の教授たちはその話題も含めて和やかに談笑をしてくれ、私も大変ホッとしたものでした。

ちなみに、アメリカ英語でbiscuitと言えば、一般に日本語のスコーン(私はあれを食べると必ず喉が詰まります(笑))のことを指します。

(※アゴスでは、たとえば、IELTS ReadingとListeningのクラスで、一部、イギリス英語をアメリカ英語と比較しながら学ぶこともできます。)